732: ◆DAbxBtgEsc[saga]
2011/07/06(水) 19:52:35.25 ID:3g1mfml1o
・・・
「……」
芳川桔梗は、今現在研究所の一室にある高さ2m大の円筒器の前でキーボードを叩いている。
モニター上のコンソールには大量の文字列が書き込まれ、
円筒器内の培養液では手術服を着た打ち止めが、芳川のタイピングに合わせるようにプカプカと浮かんでいた。
「後はこのプログラムを更新して終わりね……」
芳川は調整に必要なプログラムのダウンロードとインストールを終えると、ファイルの整理を始めた。
打ち止めの調整ついでに、自身の研究に関する幾ばくかのレポート等もまとめて自宅に持って帰るためだ。
調整の時間も残りわずかだが、持ち変えるべきデータは元々多くない。
故に調整が終わるまで、少しの間手持無沙汰になる。
その為、ただ何とは無しに、引き出しに放置されていた絶対能力進化実験の概要を納めたファイルを眺めていた。
特に意味なんてない。何度も何度も読み返したファイルだ。最早内容など暗記したも同然だった。
それは他の研究員も同じ事で、芳川は久々に見るなあ、と何となくそのファイルの中身を眺めていた。
すると、ファイルの中にある数百枚の紙の中に挟まれた、奇妙な用紙が見つかった。
「このデータは見たこと無いわね……?」
更新日時は、8月20日と記されている。分からなくて当然だ。
自分がこのファイルを完璧に暗記したのはおよそ半年前。
それ以降このファイルを開く事は無かったため、分かるわけがない。
「自分だけの現実(PersonalReality)……?今更何の事を書いているのかしら」
何故、更新されているのか。
今更確認しても栓無き事なのだが、好奇心に負けて、そのデータを閲覧することにした。
そこには。
「これは……ッ!?」
突如として、芳川の後頭部に衝撃が走った。誰かに殴られたようだが、顔までは分からなかった。
そしてその部屋には更新が完了したと言うのに、培養液に浸り目を覚まさない打ち止めと、モニターに浮かんだsleepmodeという文字だけが残されていた。
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