79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/06/05(日) 23:46:11.81 ID:/Kp9V7X1o
「あの……」
海原が問いかけようとしたその時、声に被さるようにしてピリリリと携帯の着信音が鳴り響いた。
上条は一瞬海原の方に視線を向けたが、すぐにポケットに手を伸ばし携帯を取り出して確認する。
電話だったのか、通話ボタンを押し耳に携帯を当てる。
相手の声は聞こえなかったが、予想はついた。
美琴がいつまで経っても出て来ない上条を心配して電話をかけてきたのだろう。
「ああ、美琴?すまん、すぐ出るよ」
予想に相違なく、美琴の名を呼ぶ上条。
これからどうなるのだろうか。断罪を待つ時の胃の辺りが縮こまる感覚がどうにもいたたまれない。
彼女の柔らかな目が暗い軽蔑の色に変わる瞬間を目の当たりにするのだろうか。
自業自得でありながら、やはり腑を捩じられるような痛みはキリキリと海原を苛む。
「ん、帰りたい?どした?…………ああ、うん。わかった。じゃ、帰るか。……うん、ごめんな。たっぷりお詫びはするからさ。な?」
まるで自分などいないように会話を進める上条。こちらをチラリとも見ないが、かえってありがたいように思う。
もちろん会話に入る事などあり得ないのだが、かと言ってこのまま見逃してもらえる事もないだろう。
海原は所在無げに視線を下げて、通話が終わるのを待つ。
「わーってるよ。じゃ、切るな。うん」
ほどなくして通話が終わり、パタンと携帯が閉じられる。
それが法廷に響く木槌の音のようにも思えて、海原は身体を強張らせる。
上条はそんな海原を見ても先ほどと変わらない、何とも適当な様子でまたもやうーんと唸った。
「とりあえず、ついてこいよ」
一言だけそう言うと、海原に背を向けてフロアの方へと歩いていく。
気も足もとてつもなく重いがいつまでもここで突っ立っているわけにもいかないので、海原は緊張で固まった足をほぐすようにゆっくりと動かす。
「ああ、今は美琴に見つからないようにちょっと離れといてくれな」
上条は歩き出した海原を見る事もなく、背を向けたまま思い出したように告げ、出ていってしまった。
話が出来るよう場所を移すのは当然だが、後の発言の意図が読めない。
しかし引き止めて反論や質問ができる雰囲気でも立場でもないかと思い直して、言われた通り少し待ってから合流した二人の様子を伺いつつ、勘付かれないよう距離をとって後をついて行った。
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