過去ログ - 王様「ハハッ」 ほむら「・・・は?」
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39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/06/03(金) 10:34:07.86 ID:HaALmRrW0
 イグニスは跳び上がった。さやかも、それに追随して飛翔する。速さはさやかが勝っている。

さやか「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 剣を振るうのに充分な距離に縮まると、さやかは構えていたサーベルの突端をイグニスに合わせ、全力で突き出した。しかし、それはイグニスがキーブレードの刀身で流すことによって、易々と軌道を変えられてしまう。さやかが驚愕に目を瞠ると、イグニスは容赦なく腹を殴り、そして顎を殴った。消え失せそうな意識を気合で保つ、しかし今度は胸倉を掴まれて、抵抗の間もなく宙に投げられた。天井を突き破り、さやかは夜空に舞う。呆然として、自身の無力を実感する――が、反省の間もなく、空間転移したイグニスによって、さやかは工場の入り口付近へと蹴り飛ばされた。下には、再び空間転移をしたイグニスが待ちうけていた。さやかはそれをぼんやりと視認し――憤慨する。体を反転させ、宙を蹴った。

さやか「なめやがってえええええええええええええっ!!」

 こいつは確かに強い。引け目や負い目もある。だが、こいつはしてはならないことをした。自分の親友に害意を向けたのだ。許せない、誰よりも優しい自分の親友に・・・ここで自分が敗北すれば・・・まどかが何をされるか解かったもんじゃない!!さやか気を失っている暇などないのだ。両手にサーベルを握り、振り上げた。イグニスもまた、再びキーブレードを現出させる。さやかの渾身の一撃を、イグニスは片手で受け止めた。が、それは織り込み済みだったさやかは、今度は間髪いれずに攻撃を繰り出す。右足を後ろに振り、つま先にサーベルを召喚した。そして、一気に振り上げる。
その奇抜な戦術に、サーベルの軌道に入らないようイグニスは斜め後ろに跳んで回避した。さやかは着地すると、再び滑空し、イグニスに剣を振るう。がむしゃらにやっても勝てない、しかし、さきほどのような奇を衒った攻撃であれば、この怪人と言えども単調な攻撃ほど悠然とは対応できないようだ。――勝機が見えてきた。
 しゃがんだイグニスに跳びこむ。剣先はイグニスを捉えている。その構えばかりだ。イグニスはキーブレードを薙ぎ、サーベルの刀身を払おうとした。

さやか「――にっ!」

 しかし、それは宙を切る。さやかはイグニスが払いに来るだろうことを予期し、自分のサーベルが相手の剣の攻撃範囲に入る前に、一度着地して、剣少し引き、半回転させたのだ。さやかはそのままサーベルを垂らして、全力で踏み込み地面を弾くと、全身全霊でサーベルを斜状に振り上げた。自分でも、何をしているのか理解出来ないほど、本能的だった。当然、切ったのか、そうでないかも解からない。――いや、そうではないのだろう・・・さやかは後ろからの拍手にうんざりして振り向いた。

さやか「・・・まさか、今のあたしの全力なんですけど」

さやか「・・・なんなのさ、あんた。あたしらの敵なの、それとも味方なの?どっちなわけ?」

 イグニスは何かを投げた。小物だ。見覚えがある。前にマミから見せてもらった、グリーフシードというものだ。

さやか「・・・これ、あたしにくれるの?」

 訊ねたときにはもう、怪人は消えていた。

さやか「・・・なんだったんだ、あれ」

ほむら「あの人は、敵ではないわ」

さやか「――うおっ!ほ、ほむら!あんたいつの間に!?」

ほむら「今よ。それよりも、変身を解いて早くグリーフシードを使いなさい。相当の魔翌力を使ったでしょう?」

さやか「あ、はいはい」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「おうまどか!えっへっへ、勝ったぜ、多分!」

ほむら「どう見ても貴方の負けでしょう・・・あの人、していたことがほとんど防衛じゃない。稽古付けてもらった、と見るのが無難だわ」

さやか「なんだとー!つぅか護ってばっかりじゃなかったし、あたし顎と腹殴られたし!ありゃどう考えても喧嘩だね!んで、あたしの勝ち!義憤の勝利!イエースッ!!」

ほむら「はぁ・・・言ってなさい。せいぜい、驕らないことね」

さやか「それは・・・うん。解かってる」

 ほむらの言うとおり、あの怪人はさやかに鍛錬をしたのだろう。あれは戦争ではない。もしも本当に容赦ない戦いであれば、あのとき、剣を向けられた時にまどかを失い、そして自分も絶望の中死んでいただろう。解かっている。自分は負けたのだ。さやかは空を見上げた。初陣は、見事な黒星によって彩られていた。


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