17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)
2011/06/03(金) 23:37:37.35 ID:qrhpuxVAO
「話を戻すか……で、会社を辞めてどうするつもりなんだ?自分探しの旅に出るなんて言うなよ」
「それ、いいね」
彼は溜め息を吐いて、煙草をくわえて火を着ける。
先程までの煙と相まって部屋の中が白く染まったので、立て付けの悪い窓を開けて換気する。
郊外にあるボロアパートなので、静かなものだ。
「馬鹿言え。時は金以上に大事なんだぞ。それに自分探しの旅って俺は大嫌いなんだ」
「参考までに理由を教えてくれないか?」
僕も煙草を吸おうと取り出すが、生憎とさっきのが最後の一本だった。買い置きが無いかと辺りを見回していると彼が何も言わずに煙草を一本、差し出してくれた。
こういった気遣いが、昔からできる奴だったな。
僕は貰った煙草に火を着けた。
「自分探しって、自分は今ここに居るじゃねえか。ドッペルゲンガーでも探しに行くのかよ」
「深いような、浅い理由をアリガトウ」
そう言われれば、くだらない気もする。
いくら旅に出ようと、変わるものは気分くらいだ。
「自分探しの旅なんか、行かないさ。とりあえずニート生活かな」
幸い、貯蓄は人並み以上にある。もともと余り物欲が無い僕は『趣味は貯金です』と言える人間だ。
それでゆっくりと自分に合った仕事を探せば良い。目の前に座る彼の様に大金持ちに成りたい訳でもない。
「……それで、結局はまた辞めるんだろ。自分に合った職業なんて無いんだよ。仕事に自分を合わせるか、別の場所に働く理由を設置しないと」
「働く理由、ねぇ……」
生きる事、金を稼ぐ事、それ以外にあるのだろうか。この場合、僕に合った仕事と云うのは……あれ、なんだろ?
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