過去ログ - ほむら「本当はまどか以外とも友達になりたかった」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 20:56:07.58 ID:lLHRrm4v0

陽が落ちる。見滝原はまだ若い街だ。鈍くきらめくビルが,道路が,工場が,強烈な西日を散らして,
街は鮮やかな茜色に染まる。

金糸が錆びついたような色。あの人がいなくなるのは,いつもこんな日。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 20:57:44.29 ID:lLHRrm4v0

ひとつ深く息を吐いて,私は移動をはじめる。向かう先は,さっきまであの少女がいたマンションの一室。
ここからは空中回廊でつながっているけど,私は一度階段を降り,向かいのマンションにエントランスホ
ールから入り直す。なんとなく,それが礼儀な気がしたから。あの人ならきっとそう言うから。

以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 20:59:33.87 ID:lLHRrm4v0

ずっと秘密にしていること。はじめは,友江さんだと思っていた。学校は休んでばかりだったから,巴と
いう字を知らなかった。今でも,漢字は嫌い。私たちが口に出せるのは,ひらがなだけだから。私の心を
掻きむしるのは,巴マミっていう三つの文字じゃなくて,ともえまみっていう五つの音だから。

以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 21:01:27.39 ID:lLHRrm4v0

リビングに入り,少し目を細める。ガラスのテーブルには数冊の紅茶の本と一冊のキャンパスノートが
置かれ,その脇にはティーセットが散乱していた。お気に入りのフォションの茶葉,それを計量する小
さな木匙。可憐な花柄で統一されたポットとカップとソーサー。少しだけ自慢げだった,ヴェネチアン・
グラスのティースプーン。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 21:03:00.42 ID:lLHRrm4v0

ティーセットをまとめて,流しに持って行く。本を本棚に戻す。栞はそのままにしておいた。キッチンから
布巾を取り,ガラステーブルに点々とついた紅茶の飛沫を拭き取っていく。

ぽたり,ぽたりと新しい水滴がテーブルに落ちて,いつまで拭いても終わらない。自分が汚したものくらい
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage saga]
2011/06/04(土) 21:05:05.52 ID:lLHRrm4v0

必死に口元を抑えて嗚咽をかみ殺す。乱暴に瞼をこすり,洟をすすり,頬を叩く。カチューシャを引きちぎ
るように抜き取り,滅茶苦茶に髪を掻きむしる。ああきっといま,私ひどい顔してる。

女の子がそんな顔しちゃダメよ,もっと可愛く笑いなさいな。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 21:07:41.08 ID:lLHRrm4v0

あの人は,私のループが始まる時点ですでに魔法少女になってしまっている。だから,どうしても,
どうやっても,救うことができない。何度も何度もあの人を救う道を探した。でもその度に,私の
希望ははかなく打ち砕かれてしまった。

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 21:09:52.85 ID:lLHRrm4v0

先輩。ずっと学校に行けなかった私の,はじめての先輩。やさしくて,ちょっぴりお姉さんで,面倒見が
よくて,時々お茶目で,頼りがいがあって。真っ白な病室で夢見ていた,少女漫画に出てくるような理想
の先輩。人を頼るのがすごく下手だった私が,はじめて心を預けることのできた人。

以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 21:11:23.25 ID:lLHRrm4v0

リビングの茜色は少しずつ褪せていく。いつしか涙も涸れてしまった。もう一度テーブルを拭いて,
布巾をキッチンに返す。バルコニーへと続くガラス戸に,私の姿が映り込む。案の定,とても不細工
な顔。そしてどこか,はじめてあの人と会ったときの私に戻ったみたい。

以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2011/06/04(土) 21:13:42.69 ID:lLHRrm4v0

紅茶の香りを胸一杯に吸い込んで,もう一度大声をあげる。さあ,おしまい。戻れなくなる前に。
カーテンを閉め,茜色の光線をかき消す。

大丈夫。私はまだ,戦える。
以下略



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