40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/06/08(水) 00:09:54.22 ID:dyIqxHodo
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『くそ、追い詰められた』
私と佐倉杏子は、廃ビルのとある一室にいた。
魔獣どもの巣窟と化していたここに攻め入ったまではよかったのだが。
隠れて潜り込んだのに、いつの間にか私たちの存在は知覚されてしまっていて。
こうして追い詰められてしまっている。
それでも勝算はあった。
あったのだけれど。
どうしても私たちは、ある一人の仲間を喪った痛手を引きずりすぎてしまった。
その結果として散々に打ち負かされ、こうして敗走すらも出来ず立て篭もっている。
『あの防火扉、数分も持たないわね』
『……壊れた瞬間に反撃するしかない。 いちにのさんで、一気に薙ぎ払うぞ』
息を呑む。
もはや唯一となる障害物は、所々から異様な匂いを放っている。
黒い染みが段々と広がり、そして、
光が収束し、シャッター奥の空間までまとめて吹き飛ばす。
壁が吹き飛ばされて開けた視界。
その目の前に、佐倉杏子が立ち塞がる。
『……ごめんな』
そして突き飛ばされる。
光線が突き抜けて、たった今背後に開いた穴めがけて。
『…………杏子、杏子! あなた、何を!?』
慣性に引きずられる私は、容易く穴を通り抜ける。
疑問符を叫びながら落下していく私は、耳に辛うじて一つの声を捉えていた。
『最後くらいはさ、誰かのために生きたいんだよ』
ビルからは金属音と爆発音が響く。
私はその結末を確認することもできないまま、ただ逃げるばかり。
何度も何度も、恨みの言葉を吐きながら。
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