過去ログ - とある暗部の超電磁砲 -SS速報VIP

過去ログ - とある暗部の超電磁砲

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38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)[saga]
2011/07/05(火) 00:49:10.40 ID:16KSaAYAO
～１～

硝子張りの建築物が陽炎を映して墓石のように聳え立ち、鏡張りのビルディングが逃げ水を写して墓標のように並び立つ。
澄み切り晴れ渡る蒼穹に揺蕩う雲の峰、白南風を受けて回る風力発電のプロペラに取り付き歌い上げる鳴蜩。
日本人ならば卒塔婆のように見え、異国の血を引くものならば十字架のように思えるそれを――

「………………」

少女は血染めの白壁に寄りかかり、腕組みしながらそれをぼんやりと見つめていた。
その眼差しは昼日中にあって光を照り返す事も吸い込む事もなくただ朽ち果てた樹木の虚（うろ）のようでもあった。
その色の抜けてしまった滑らかな頬には、二度と触れざる誰かの手指のように飛び散った血痕。そこへ――

麦野「――おい、“新入り”」

「……なによ」

麦野「なによ、じゃねえよ」

ジャリッ、と膠のように張り付く血糊を靴底で踏め締めながら麦野沈利が歩いて来る。
屍山血河の様相を見せ、そこかしこに散らばり、転がり、潰され、捨てられた肉片と肉塊で織り成す赤絨毯の上を悠々と。
その足取りは粗野を通り越し、粗暴を通り過ぎて尚聞く者の眉を顰めさせるような言動に反してあくまで優雅だ。

麦野「散らかしたらお片付け、ってママから教わらなかったかにゃーん？」

「親は関係ないでしょ、親は」

その者の育ちは足取りと背筋に現れるというが、そう言う意味では彼女が深窓の令嬢であったという与太話もそう的を外れていないのではないかと少女は考える。
この誰も彼も見下し、睥睨し、値踏みしたその側から冷たく鼻で笑うような生まれついての女王様気質に目を瞑ればの話だが。

麦野「まあそれもそうか？今更親に顔向け出来るような立場じゃないわよねえ？親不孝者」

「そんなのあんたに言われたくないわ。お天道様に顔向け出来ないような事ずっとして来たくせに」

麦野「ああそうさ。テメエが処女切る前からずっとこうさ。年長者は敬いましょう、って常盤台で教わらなかったか？クソガキ」

歩み寄って来る麦野の左手が、御坂の右頬へと伸び、血痕に触れて絵筆のように滑る細い手首を――

「――そのクソガキ、って言うのやめてよ」

二度と掴めない遠い右手にするように、少女は掴み取り、そしてねめつけた。

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