過去ログ - 銀「黒が好き」 滝壺「そんな銀を私は応援してる」
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5:loss[saga]
2011/06/19(日) 18:37:27.96 ID:j5EEjjjh0


 長い付き合いなのに、浜面は未だこの友人の名をよく知らない。『半蔵』と呼ばれているし、呼んでいるが、フルネームではないだろうし、本名の可能性も低い。別に重要なことでもないと浜面はふと浮かんだ疑問を振り払った。寝起きはいつもそうだ。頭の悪い自分が妙にセンチメンタルになる。たぶん、いつまで経っても慣れない夢のせいだ。

「行ってくる」
「大丈夫か?」
「なんでもねぇ」

 高級車を盗んでブローカーに渡す。それだけの簡単な仕事。下っ端がやっても問題ないが、ただ単純に自分の仕事が早いから任されているだけだ。ピッキングで車のロックを解除するのに、約10秒、エンジンがかかるまで約15秒。30秒以内に車を動かすことがこの仕事のコツだ。1,2,3,4,5,6,7台。今日のノルマは達成。

「ああ、畜生!」

 今日はどうかしていると浜面はハンドルに頭突きをした。クラッションが騒音となって響く、周囲から視線が集まるが知ったことではない。ガンッ、ガンッと繰り返しハンドルに頭をぶつける。

「なんで、今更」

 覚えている。

 生真面目で優しかった弟の事を。

 映画監督になりたかった妹の事を。

 コツコツと自分たちのために働いてくれていた両親の事を。

「ちくしょう!ちくしょう!」

 適当に煙草を吸うなり、酒を飲むなりすれば忘れられるようなモノじゃなかった。普段なら全く気にすることなどない。不良、この町ではスキルアウトと呼ばれるチンピラらしく、無意味に、怠惰に、自堕落的に生きていれば楽に済む。今日に限って浜面にはそれができないだけで。





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