306:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/08/14(日) 21:45:02.01 ID:Kids5Lg0o
「でも、その子は動かなかった僕のことも考えずに、よくバイオリンの演奏を聞かされました。
僕はその度に、やっぱり僕はその程度なんだって…ずっと思ってました」
ろくに弾くこともできない自分の好きだったバイオリンを聴かされる。
恭介にとっては苦痛でしかなかった。
だが渡は、
「多分その子はそうすることでしか、君のことを励ましてあげられないって思ったんだと思うよ」
「え…?」
いままで自分のことばかりを考えて、そんなことは一切思いつかなかった。
「そうすることで、君がまた音楽を目指してくれる。そうすれば君は笑顔ができる。
君の笑顔を見たかったんじゃないかな?」
そう言われた。
「僕も、腕が治ると聞いたとき、その娘の笑顔をもう一度みたいって思いました」
「それって、世間じゃ『恋』って言うんじゃないのかな?」
「恋…?」
自分が?さやかに?
だがよく考えてみるとそうだった。
さやかが見ていてくれれば、自分はどんな場所だろうと生きていける。
そんな考えがあったのも事実だ。
「その娘に伝えてあげなよ。君の想いを。『好き』っていう気持ちを」
少し考えた後、
「はい!」
力強く返事した。
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