過去ログ - パイルドライバー
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2011/06/26(日) 15:40:50.78 ID:BD9wf7ABo
八月の早朝の空が遮音壁の隙間から僅かに見える程度で、コンクリートを眺める趣味のない紬はすぐにそれに飽きてしまった。
紬につられて外を見ていた梓も、車窓の発見と言えば遠くにそびえる巨大な杭打ち機のみで、それすらすぐに流れていったので紬の方に視線を戻した。
紬はサンダルを履いた自分の足を動かして爪先を眺めながらシャララと鼻歌のようなものを歌う一人遊びに興じ始めた。
紬の爪の光沢。梓が話をしにくい理由が一つ増えた。
ペディキュアの光沢のえも言われぬ緊迫感。
無色の爪に重ねる無色が放つ気品の光を見て、梓は自分の真っさらな爪が野放の不恰好なものに思えた。
紬への憧念や畏れではなく、爪に彩りを施すという習慣の無さが違和となった。
しきりに足を動かす紬がふと顔をあげると、梓と目が合った。
困ったように笑って、梓はまた味気無い車窓を眺めることにした。
そしてやはりその味気無さに困るのだった。
新幹線はあくまでも移動手段であって、娯楽を目的としていないということに今更ながら梓は気付いた。
梓はノースリーブの青い服と七分丈のパンツを、紬はチュニックの白いワンピースとハーフパンツをそれぞれ着ていたが、その格好が季節に合っているかどうかもわからなくなった。
トランプでも持ってくれば良かったと思いながら、梓は高架線の内側が流れていく様子を見るともなく見て、遠方に杭打ち機を思い描いた。



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