過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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119:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/07/15(金) 23:44:11.17 ID:PXVe/j9AO
〜12〜

雲川「…………ほう」

雲川は青白い月を目指すように闇夜を渡る飛行船の甲板より、秋風にカチューシャで纏められた黒髪とプリーツスカートをそよがせていた。
手摺りに凭れ掛かり、珍しく糸のように細い笑い目を開いて黙り込んでいる青髪を見やりながら。
それは歎息というより感歎と呼ばれる成分が多分に含まれた、曰わく瞠目と共に吐き出されたそれ。

雲川「(男というものはどいつもこいつも、ある瞬間バチっと女を立ち入らせない時があるけど)」

それは雲川をして『無血開城』と言わしめた上条当麻もまた時折見せる横顔の評価に似ていた。
それは麦野をして『一番魅かれて、一番遠い背中』と評されるものだった。
雲川をしてさえ計れない青髪の胸の内。何年何組に属しているかさえ明かされない少女よりも謎めいた眼差し。

雲川「(まるで、届かない月に手を伸ばしている気分なんだけど)」

雲川は青白い月に向かって手を伸ばす。古来より『不可能』『ありえない』との代名詞たるブルームーンに。
広げた手指の間より射し込む月明かりに細める眼差し。そこに重なるもう手の届かない上条当麻の笑顔。
その笑顔がもう、あの暗部上がりの女のものになってしまった事を雲川は今日改めて理解した。

雲川「(私には、秋の夜が長すぎるけど)」

行くべきではなかった。常と変わらぬ飄々とした己を保つのに精一杯で。
行って良かった。最後に上条と二人ではないが皆と写真が取れて。
焼き増しを頼んだ。最初で最後の一緒に映った写真。これでいい、これでいいと自分に言い聞かせた。

雲川「(――私はこの月を、次は誰と見上げるんだろう)」

次、この月に重ねる笑顔は誰だろうと――考えた雲川の答えはもう間もなく出される事になる。
それは上条とよく似ていながら、全く異なる笑顔を宿した誰か。
生憎と、その男が背負うは月輪ではなく日輪という違いこそあれど――

雲川「フルーツサンド、ちゃんと奢れよ。約束なんだけど」

青髪「はいは〜い。メロンからラフランスからチェリーまでありまっせ〜」

風を受けて回るあのプロペラのように、逆風の中にあっていや増すばかりの勢いのその男との出逢いは、もう少し先の話――

雲川「――――――………………おやすみ」

空に空いた穴のような月が、瞳の中で滲んでぼやけた





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