過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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140:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/07/17(日) 21:21:19.43 ID:3guX2yCAO
〜11〜

私はずっとしずりがうらやましかった。私はずっとしずりがねたましかった。
しずりは綺麗なんだよ。スタイルだって私じゃ全然適わない。
ぶっきらぼうで男勝りで蓮っ葉なで……でも、本当は不器用で傷つきやすい女の子なんだよ。
料理だってお店に出て来るみたいに美味しいし、私は覚えてないけど『お母さん』みたいに世話を焼いてくれるかも。

しずりがもしそれだけの女の子なら私は嫉妬しないんだよ。
私が嫉妬するのは……私が悔しいのは、そんな努力すれば私にも出来る事の中になんてないんだよ。
しずりが最初からとうまの恋人でも、それだけなら私はこんなに苦しくないかも。



――だって、しずりはとうまのために戦える『力』があるから。



すていると初めて戦った時、私はしずりの超能力を『光の魔術師』だと思ったんだよ。
どんな壁やビルだって吹き飛ばせる。殴ったり蹴ったり走ったりするのだってとうまより全然強い。
魔術の事が全然わからなくても、『あんぶ』にいた人間だから悪い人の考える事がわかるって。
悪い人の行動を先読みして先回りして先手が打てるって。



――私には、魔術が使えない。逃げるのは得意だけど戦えない。完全記憶能力で何でも覚えられるけど悪い人の考えは読めない。



しずりは言ってた。自分は人喰いライオンだからって。
強者の知識を守る敬虔な子羊の私にそんな事真似しなくていいって。
しずりがしてる事を、私が覚えたらとうまがすごく悲しむって。

しずりが戦えない子で、それでもとうまの恋人って言うだけなら私は嫉妬しない。
私は魔術サイドの中で、必要悪の教会の魔術師として……とうまのパートナーになれれば良かったかも。
恋人に『心』を持って行かれても、私はパートナーとしてとうまの『命』を守れる子になりたかったんだよ。

しずりが恋人でも、パートナーでも、それこそ最初からいなかったとしたら――
私はもっとぐうたらしてただとうまのそばにいられる……
そんな幸せにただひたっていられる大食いの女の子でいたかも知れないんだよ。
でもそうはならなかった、ならなかったんだよ。

ズルいんだよ。恋人として勝てない、女として負ける、パートナーとして追いつけない、じゃあ私はどうしてここにいるの?
私はとうまの側にいたいだけなのに、もうどこにも座れる椅子がなかった。

だから一度――言っちゃいけない事を、私はしずりに言ってしまったんだよ。




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