過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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◆K.en6VW1nc
[saga]
2011/07/24(日) 21:13:38.32 ID:9nLn6TsAO
〜9〜
麦野「………………」
麦野沈利は考える。美容院は五日前に行った。秋物の新作は大凡買い漁った。
出不精というほどでもないが、明確に欲しい物がある買い物以外での麦野の外出先はひどく限られている。
以前ならばアイテムがいた。今は上条がいてインデックスがいる。
一個人としての麦野沈利は自由人である。しかし制限無き自由とは裏を返せば選択肢がないと言う事だ。
故に今もこうしてソファーに身を預けたままボンヤリとしている。
麦野「……ヘタクソになったわね」
それは一人の時間の使い方、暇潰しと言っても良い。
恋愛至上主義でもなければ数分置きにメールを送るような恋愛依存体質でもないごく一般的な感性を次第に麦野は育てつつあった。
が、上条と二人ないしインデックスを含めた三人と行動する事が増えたためか……
以前自分が一人の時どう過ごしていたかを麦野は思い出せずにいた。
麦野「……あいつが帰って来るまで、持て余すわね色々と」
例えば、今までこの部屋に帰って来る時出迎えてくれる誰かなどいなかった。
明かりだってついていない、食事だってない、暖房も入っていない。当たり前である。
何故ならば独立した学生らの一人暮らしが当たり前の学園都市にあってはそれこそが一般的なのだから。
麦野「……独り言多くなったな」
その当たり前から麦野は遠く離れた場所にいた。元々が切った張ったの鉄火場、屍山血河の頂の上から物言わぬ生命の残滓と肉体の残骸を見下ろし君臨して来たのだ。
それが麦野の中の『当たり前』だったのだ。その当たり前が今や――
人を殺した手で料理を振る舞い、物を壊して来た手で家事をする事に置き換わった。
麦野「………………」
その拭い去れない違和感、この飲み込めない異物感。
考えれば考え込むほど迷い込む螺旋の迷宮。暗闘の中人間として壊れた心が、平穏の中で溶けて行く感覚。
それは喪失に似た感覚で、病にも通じる感傷だった。
自分は平和の中に居場所を見いだせないどころか人間に生まれて来た事そのものが間違いだったのではないかとさえ思える。
麦野「……よしっ、行くかっ」
そして麦野はソファーに別れを告げて何代目かになる半袖コートを羽織るべく立ち上がる。
一人でいるとロクな事を考えない。ならば当て所もない散歩にでも出掛けようと
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