過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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438:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/08/14(日) 20:35:03.14 ID:0rnOj66AO
〜1〜

美鈴「はあ……美琴ちゃんったら」

御坂美鈴は学園都市第七学区地下街にあるオーセンティックバー『LEGROS』のカウンターにて嘆息していた。
左手にはブラッディシーザーのグラス、右手には押せど響かぬ携帯電話。
それを眺める横顔はバーの仄暗い照明と相俟って憂愁を帯びたそれであり……
中途で切られた通話、返って来ないメールの内容を反芻せど湿気った乾き物ほどにも肴にならない。

美鈴「(少し強引に行き過ぎたかしらね……反発されるのはわかってたけど)」

最初は記憶が無くなるまで酩酊した娘に対する叱咤。
次いでそれらの介抱をした麦野を話に絡め、ワンクッション置いてから本題――
戦争が始まりそうな学園都市から娘を連れ戻すにあたっての話し合いの場を持ち掛けようとしたが素気なく通話を切り上げられた。
二日酔いの頭痛よりマシとは言え、それ以上に根深い問題に美鈴は頭を悩ませた。

美鈴「(でもね美琴ちゃん……貴女が譲れないように、私も親としてこれだけは譲れないの)」

出来うる限り顔色や声色に出ぬよう努めているが、飲まずにはいられない気分であった。
昨日の散々だった保護者会や昨夜のけんもほろろな学園都市側の体温。
その上こなさなければならないレポートが控えており、この後申請許可の降りた時間になれば断崖大学のデータベースセンターに行かねばならない。
夫・旅卦も今現在電話に出られないようでこちらも音信不通なのだ。

美鈴「(はあっ……とりあえず、いったん時間と距離を置いて根回しと搦め手で少しずつ外堀から埋めて行くべきかしら)」

シャクシャクとブラッディシーザーに添えられたセロリをかじりながら美鈴は携帯電話をカウンターに置く。
とかく懸念材料がつい先程飲み干したダーティーマティーニのオリーブのように持て余されてならない。
我が子が戦渦に巻き込まれる事も、戦火に焼かれる事も、戦果を上げる道具にされる事も御坂美鈴は拒否する。

美鈴「………………」

学園都市とは一種の閉鎖都市である。万が一の有事の際、親だからと介入出来得る手立てはあまりに少ない。
何かあった時、親の目から見て14歳の少女に過ぎない娘を守り、助け、救い出してくれるような存在が果てしてこの街にいるかどうか

美鈴「……ないわねー」

その可能性を感じられた少年は、あのブラックダイヤモンドのような少女と既に結ばれているのだから――




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