過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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461:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/08/14(日) 21:02:28.03 ID:0rnOj66AO
〜17〜

浜面は夜空に吠えた。ビニールシートの捲れ上がった一部から除く、額縁に切り取られたような月に向かって吼えた。
それは負け犬と謗られ、落伍者と罵られ、たった今もリーダーの器ではないと自他共に認める力無い自分への、そして――

浜面「ヒーローなんて……ヒーローなんてどこにもいねえじゃねえか!!」

ヒーローなどいないこの冷笑的な世界そのものへの怒りだった。
場違いにも弱者を守ろうとしヒーローに成り損ねて逝った駒場への。
それを見下ろしどこかでそんな自分達の綺麗事を鼻で嘲笑う者達への。
それはやり場もなく行き場もなく逃げ場さえない怒りだった。怒りだけが浜面を支えていた。

浜面「クソッ……!」

資金源のうち九ヶ所は破壊され、残る十四ヶ所は他ならぬスキルアウトの身内らが持ち逃げした。
船頭を失った泥船からネズミが逃げ出すのは当たり前である。
頼り無く心許なく覚束無い浜面というハーメルンの笛吹き男に、ネズミ達はレミングス(集団自殺)に向かう義理などない。
卑屈なプライドに後ろ足で砂をかけられた浜面を支えるもの。
それはあの『いやに丁寧な口調の男』から依頼された『写真の女』を殺害し受け取る報酬と勝ち得る手腕を示す事だけだった。

浜面「……駒場、あんたの形見もらってくぞ」

そして浜面は壁の染みになった男の前で宣言する。そこに立つ己に宣誓する。
その手には駒場が身体に仕込んでいた発条包帯(ハードテーピング)……そして予備の演算銃器(スマートウェポン)。
そう――受け継ぐのだ。駒場の遺志と意志を己の意思と意地に変えて。
器は継げなくとも、その力を受け継ぐのだ。勝ち負けにこだわる先に行き着く死より、意地汚く生き延びるネズミの力……窮鼠の一噛みを。

浜面「……クソッタレなヤツらからの、クソッタレな仕事を、クソッタレなヤツらまとめて……やってやるよ!!」

浜面は踵を返す。引き返す事も振り返る事も後戻りも出来ない道を行かねばならない。
もしその道の途中で、弱者も救ってくれないヒーローが、自分を悪者だと立ちふさがったとしても

そんな偽善者には、このありったけの怒りを込めた銃弾をくれてやると固く胸に誓って――




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