過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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47:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/07/10(日) 12:49:20.87 ID:U58nKrMAO
〜14〜

―――しかし―――

上条「じゃあ、それは沈利に元々あった良い所が出てきたって事じゃねえか?」

麦野「……そりゃあ身内の贔屓目ってもんでしょ」

上条「あれだよ。雪解け……みたいな感じなのかな?こんなあったかい場所で、凍ったままだった沈利の優しい所が水みたいに流れ始めた……そんな風に思ってんのが俺だけでも、俺はそう思ってるぜ」

上条が予め用意していたボウルにカンカンと卵を叩き付け、器用に卵白だけを落として行く。
そして空の中に残った二つの卵黄を、待ってと制止した麦野が手近なグラスに落とす。
さらにその中にウスターソースとビネガーと今し方使っていたペッパーを目分量で振り掛けて行く。
即席のプレイリーオイスターの出来上がりである。

麦野「……恥ずかしい事ばっかり言わないの。これ飲んでちょっと黙ってて」

上条「おっ、サンキュー」

麦野「(……優しいって言うのはさ、こんな人殺しを地獄の底から抱え上げて救い出すような、アンタみたいなお人好しの馬鹿のためにある言葉なんだよ、当麻)」

卵白を落とせば後はメレンゲになるまで泡立てるのみ。後は粗塩とローズマリーとタイムの葉を落として混ぜるのだ。
上条が卵黄を一気飲みしつつ、かき混ぜる傍らで麦野はレタスとプチトマトを水洗いする。

麦野「(……馬鹿の一言ね麦野沈利。自分に優しい言葉をかけてくれるヤツは全部善人で、自分に厳しい言葉をかけてくるヤツは全部悪人か?まるで世界の中心に立ってる悲劇のヒロイン気取りね?)」

麦野沈利は戸惑っている。上条当麻のために生きて死ぬと誓った思いは揺るがない、揺るがせない、揺るぎない。
しかし……否応無しに、このひだまりのように優しい少年が、永久凍土の地平線まで溶かしてしまう。

ギュッ……

上条「ん?」

麦野「……後はもう焼くだけだから、友達の所戻ってて。せっかく来てもらったんなら、私になんて構ってないで客をもてなしな」

塩竈包みにしたサーモンを何台目かの電子レンジのオーブンに入れる、その傍ら――

麦野「……手伝ってくれてありがとう。ちょっとだけギュッとしてて」

上条「おう」

絡めた指、繋ぐ手、組んだ腕……それだけが、それだけが麦野が『人殺しの自分』に許せた唯一のものだった。

麦野「……あんまり、私を甘やかすなよ?」

アンタのために死ぬのが惜しくなるでしょ、とは言わなかった。




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