過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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52:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/07/10(日) 12:56:24.91 ID:U58nKrMAO
〜19〜

じっくりとオープンの中で粗塩と香草を混ぜ合わせた塩竈が熱されて行くのを麦野は見るともなしに見つめていた。
腕組みをしながらキッチンに寄りかかり、今度はポーカーを始めた四人に背を向けるように。

御坂「このライムソーダっていうのもらっていい?」

御坂はやや背の低い冷蔵庫を覗き込むようにしてその内の一本を手にし、扉を締める。
『超機動カナミン』とロゴの打たれたグラスに注ぎつつ、傍らの麦野を見やる。
その内心を窺い知る余地はおろか術すら見いだせない、同じ女から見てややもすると冷たく感じる横顔を。

御坂「ディル、役に立った?」

麦野「まあ、ね」

御坂「どうしたのよ。元気ないじゃない」

麦野「そうね。だから何?」

御坂からすれば、麦野は取っ掛かりを見いだせない氷壁だった。
溶けない雪と凍てついた氷に閉ざされた、芽吹く前に花の種さえ枯死させる岩壁。
元より二人の間に友好的な関係を築き上げる下地や余地などありはしない。
両者を結び付ける一枚のハーケン、『上条当麻』というマスターピースを除いては。

御坂「ううん、何だか気になっちゃって……いきなりお邪魔して悪かったわね」

麦野「そう思うんなら食ったらとっとと出てけ」

御坂「……相変わらずよねアンタって。夏の頃からちっとも変わらない」

麦野「誰にでも振るほどデカいケツしてねえんだよ。それに……」

御坂「それに?」

麦野「……こういうのに、馴染みがねえんだよ。悪かったな。雰囲気悪くして」

御坂「ううん。別にそんな事ないわよ。アイツの友達、なんかみんな変わってる人達みたいだし気にした様子もないし」

コクッ、コクッという御坂が喉を鳴らす音とブーン、ブーンとオープンから立つ音が手狭なキッチンに響き渡る。
背後から聞こえて来る話し声や絶叫が、目と鼻の先にあるのにどこか遠くに感じられるほどに。

御坂「――だから」

麦野「……?」

御坂「だから、向こうに混ざらないの?」

麦野「……混ざりたそうな顔してたか?混ぜてくれっつったか?私が一度だってそうしたか?」

御坂「そうじゃないけど、そんなんじゃないけど、なんかほっとけなくて」

麦野「余裕綽々だね、お優しい常盤台のエースさん」

御坂「その呼び方止めてよね。私には御坂美琴って名前があんのよ」

――例えば、肩がぶつかるほど近くにいながら、遠く離れた御坂と麦野のように




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