過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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601:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/08/23(火) 21:29:01.47 ID:oaSu1JVAO
〜1〜

麦野「――――――………………!!!!!!」

上条の腕が墜落する麦野を受け止めたその瞬間、幻想(じごく)が壊された音が聞こえた気がした。
空から降って来るヒロインのようだと上条は思った。
だが残念な事にそのヒロインはどうしようもない性悪で、お姫様というよりそれを苛める継母か意地悪な姉のようであるが――

麦野「バカヤロウ……なんできたんだよ……どうして……!!」

上条「――訳は後で話す」

涙声を震わせて麦野は泣く。地獄を目にしてさえ涙一つ流さなかった少女が泣いている。
――それだけで十分だった。上条が戦う理由など。

麦野「……ちくじょお゛……テメエ……ふざけ……んなよぉ!人殺し(わたし)には誰も助けられない!救えない!!守れないんだよォォォォォ!!」

上条「………………」

麦野「前にも進めない!後ろも下がれない!!私はあんたみたいに出来ねえんだよォォォォォォォォォォ!!」

その感情の爆発を、上条は静かに受け入れ――そして言った。

上条「――お前が、罪を背負ってる事に変わりがないように」

屋根の上の美鈴を見上げながら

上条「――お前が、最後まで必死になって守った手の中のもんも変わらねえよ」

腕の中の麦野を見下ろしながら

上条「前にも後ろにもいけなくても――お前は誰かのために立ち上がれたろ?」

麦野「――」

上条「――――ありがとう。お前のおかげだ、沈利」

――静かに、優しく、笑いかけた。

麦野「……っうう!うぅぅうあわぁぁぁぁぁァァァァァああぁああァァァァァああア゛ア゛ああぁあああぁぁァァァァァ!!!!」

翼という十字架は、裏返せば剣となる。しかし十字架には――道標という意味もある。
十字架の下で誓う永遠の愛があるならば、同じ道標を見つめて共に歩む事もまた出来る。
十字架という、線と線の交差に神が宿ると言うならば
人と人との交差に宿るものを上条当麻は信じる。

傾いだ十字架のような風車の下、墓標のようなプロペラを道標に、少年と少女はここに再会した。
かつて崩落したブリッジが、麦野という椅子の子供に、上条という梯子の子供が架け橋をかけたように。

神は罪を許さない。神は罰を赦さない。

ただ人だけが、人に手を差し伸べられる。涙を拭える。

それは奇跡でも、魔法でも、ましてや運命などでもない


―――この幻想(ものがたり)に、英雄(ヒーロー)はいらない―――


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