過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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◆K.en6VW1nc
[saga]
2011/09/10(土) 21:33:28.53 ID:42BNj/aAO
〜21〜
それからしばらくし、麦野が手足の自由を完全に取り戻すと共に御坂らは帰って行った。
麦野は読み差しのSweet11月号を放り出すとサイドポニーに眼鏡姿のまま、渇いた喉を潤すための飲み物を買いに売店へと向かうべく廊下に出る。
上条と過ごした夜と迎えた朝を振り返りながら
麦野「(……生きろ、ね)」
途中、何の気なしに携帯電話使用エリアという事もあり端末を弄る。
上条からは当然連絡はない。アビニョンでの暴動や戦闘がそれだけ激しいという一つの証左である。
麦野「(――あんたこそ、生きて帰ってきなよ)」
遠く離れた異国の地で今も戦う上条を想い、胸の前で携帯電話を握り締める。
本音を言うならば連絡がないのも不安を掻き立てられるし……
あればあったで悪い報せかと胸をかきむしられる。と
ガラガラガラガラ……
???「××!××!!しっかりしろ!」
冥土帰し「動かさない方がいい。少し離れていてくれないかい?」
麦野「?」
その時、廊下を滑るストレッチャーとカエル顔の医者の声が聞こえた。
それだけではない。麦野の圭角に触れるもう一つの声音が響いて来たのだ。
思わず向き直ると、眼鏡越しの麦野の双眸そのまま見開きの形になる。
浜面「滝壺!滝壺!!」
麦野「……!!?」
滝壺「……ぅ……」
麦野「滝壺!!!」
浜面「?!」
そしてそれは――思わず口をついて出た叫びに反応し振り返った浜面仕上もまた同じであった。
しかし麦野はそれどころではない。見えてしまったのだ。
ストレッチャーの上で呻く、悪目立ちするピンク色のジャージ……
精も魂も尽き果てたような滝壺理后が顔を真っ青にして苦しんでいるのを。
浜面「………………」
麦野「………………」
浜面と麦野の眼差しがぶつかり合う。しかしそれもストレッチャーが運ばれて行く僅かな時間しかなかった。
麦野「……――」
先程までの若干浮かれていた精神に冷や水を浴びせられたかのような面持ちでそれを見送る他ない。
だが麦野は即座に平和ボケした思考回路を切り替えた。
麦野「っ」
サイドポニーを揺らしながらストレッチャーの向かう先を追い掛ける。
麦野も本当はどこかでその甘い認識に気づいていた。
心のどこかで苦い現実をわかっていたつもりだった。
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