過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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857:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/09/17(土) 21:29:12.07 ID:W55C2CfAO
〜19〜

麦野「………………」

冥土帰し「それは、孫娘とお爺ちゃんほど離れた君と僕が唯一同じくする価値観ではないのかね?」

麦野「――そうかもね」

生を拒絶してきた殺人者と死を否定する医者が共有する唯一の事柄。
神の奇跡すら手を伸ばし得る科学万能の学園都市にあって……
神の奇蹟すら人の御業で御する術のあるこの世界にあって――
未だ為し得ぬ生命の復活と時間の回帰。共に滅びと終わりを知る二人の見て来た地獄(やみ)そのもの。

冥土帰し「人は良く言うね?“振り返るな”“迷うな”“捨てよ”と。僕もこれは曲げられない摂理だと思う。だが変えられない真理などでは決してないと想う」

麦野「――もっともらしく聞こえるけど?」

冥土帰し「生きる事を山登りに置き換えればわかるだろう?後ろを振り返らねば今自分が何合目に差し掛かったかわからない。選ぶ道を迷わなければ先行きさえ不確かだ。
例え荷を捨てて頂きに登りつめてもその後暖も取れなければ水や食料も得られない。生きて降りる事まで含めて“山”なんだ。
それをせず身軽さに任せ、己が望む場所だけを目指して遭難し、挙げ句人を心配させ、それを助ける者の手を患わせる愚かしさを――君は誰よりも知っているだろう?」

麦野「先生」

冥土帰し「……いや、柄でもない御説教のようですまないね?」

一見して耳障りの良い言葉の裏に潜み、人を死に追いやる欺瞞を老医師は知っている。
子供もしくは若者の価値観ならばそれでも良いだろう。
されど老人は知る。子供や若者より遥かに成熟した大人でさえ迷っていない者など一人もいないのだと。

冥土帰し「……ただ、これだけは君に知っていてもらいたい」

右から左か、前か後ろかしかない道しか人生にないのなら

麦野「……うん」

人は道を誤りなどしない。この老医師の『友人』のように。

冥土帰し「一度の戦いや二度の闘いで出した答えもまた、一回や二回の過ちでまた覆ってしまう」

人は道に迷いなどしない。この孫娘を思わせる『患者』のように。

冥土帰し「――その全てを背に負って、僕は君に生きて欲しい。君の背を追う者達が道に誤らぬよう」

君は全てを投げ捨てて死ぬにはあまりに若すぎると――冥土帰しは笑いかけた。

冥土帰し「……もう、その背に重過ぎると言う事はないだろう?」




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