104:1 ◆BycwRokz6k[sage]
2011/10/20(木) 15:52:29.52 ID:cCfnDnxH0
あらって食べよう、そうだねー、綺麗に切りなおすー?
楽しそうな声が聞こえてくる中、俺はぼんやりと思い出していた。
『わあー、難しそうだねえ』
完全に頭は教科書の世界に入っていたいつもと変わらぬ午後、ふいにあらわれためんま。
揺れる銀髪に、思考が停止したのも覚えている。
『・・・ゆきあつ?』
成長しためんまの可愛さは、どんなものにも変わらない。めんまの心は、あの日と変わらぬ無垢なまま。
どうかしたの、と小首をかしげていた。
『めんまはね、お願いをかなえて欲しいんだと思う』
確かこのとき、意味が分からなかったけれど、ただとにかく俺は思った。
めんまのどこか覚悟したような声に。
もしかして、もしかして、めんまのそのお願いってやつをかなえれば――消えてしまうんじゃないかと、
『ありがとう、ゆきあつ!』
俺の思惑なんて知らず、嬉しそうに微笑むめんま。
可愛くて、愛しくて、後ろめたさもあったけれど、でもめんまが傍にいてくれるならそんなもの、押し潰してやると思っていた。
『秘密基地に、行きたいな』
そう言って、寂しさの影を伴う笑顔をつくるめんま。
どこか遠くを見つめていた青い瞳は、きっと幼少時代の超平和バスターズを思い描いていた。
『・・・ゆきあつ、・・・手・・・いたい・・・』
俯きながら
『めんま、が・・・・見えるの・・・・・・?』
覚えている。
瞳を見開いて動きを止めためんまを。宿海を見るめんまを。一瞬輝いためんまの瞳を。
宿海への煮え滾るような怒りと、あの、切なさを。
だって宿海もめんまが見えるんなら。
――めんまが、二度と俺のもとに戻ってこなくなってしまうんじゃないか。
『いるよ、めんま。』
確かにめんまはいるけど、 いないんだ。
久川も、安城も、鶴見も、めんまのあの切ない笑顔を、しらない。
『ねえ、ゆきあつ!めんま、うれしい!』
なんて清らかな笑顔なんだと俺は思った。
めんまが笑ってくれて嬉しい。
嬉しいのに、悔しい。
俺だけじゃ、駄目なんだ。
俺が傍にいるだけでは、駄目なんだ。
俺はめんまがこうして傍にいてくれるだけで、それだけで――いいのに。
銀色の髪が舞う。
白いワンピースが風をはらんではふくらみ、そして揺れる。
「すいかー!すいかー!」
今尚輝く、めんまの笑顔。
お願いってなんなんだ、めんま。
消えてしまうのか、めんま。
お願いを教えてくれ、めんま。
叶えないから。
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