125:1 ◆BycwRokz6k
2012/01/28(土) 02:26:47.25 ID:e9IHCWlV0
>>123
>>124
そんな・・・滅相もない。でもうれしいです、ありがとう!
冷蔵庫を開けると、白い冷気が立ち上った。こんなに暑いと、冷蔵庫の冷気も心地よい。
買ったばかりのアイスを2つ取り出す。どちらもソーダ味。おそろいだ。
「わー!ソーダ味だ!」
「ああ。この前、めんまが喜んでたからな」
「めんまはアイスなら何だって好き!」
「はは。
確かにそうかもな」
そう笑いながらアイスを手渡す。
「ほら」
「わーい!」
うれしそうに、ぎざぎざした開け口に手をかけるめんま。
俺はアイスよりも先に、そういえば回し忘れていた扇風機のスイッチを入れた。ブー、と扇風機の音。夏らしくて、良い。
「お」
袋を開けるとき、ぺりりと音がした。持って帰ってくるときに少し溶けてしまっていたのかもしれない。めんまの分の袋も一緒にゴミ箱に捨てる。
めんまは早速アイスに齧りついていた。
「ふへひゃーい!」
「なんて言ってるのかわかんないぞ、めんま」
「えへへへー」
カーテンが、網戸からの生ぬるい風で揺れる。
めんまと俺の髪も服も、扇風機からの、冷たいかと思いきや予想外にぬるい風で揺れる。
こうして俺の部屋で、2人だけでアイスを食べる日が来るとは。
隣のめんまを横目で気にしながら思う。
意外と、めんま達を俺の部屋に連れてくることは少なかった。子供の頃は、俺のうちで遊ぶよりは、宿海や安城の家で遊ぶことが多く、またそれよりは、外で遊ぶことのほうが多かったから。
それにいつも6人だったから、めんまと2人でいるなんてことはめったになかった。
好きな相手と2人だけで過ごす時間。平和な時間。ただ隣にいれる時間。
(報われたぞ、俺)
良かったな、なんて、実は必死にめんまを追いかけていた子供の頃の自分に、呑気に投げかけてみた。
「あー!ゆきあつ、溶けてるよ!」
「・・・え?」
はっとしてアイスをみると、めんまの言うとおり、下のほうが溶けてきていた。指には冷たくもぬるくもない液体の感触。
・・・夏の暑さを舐めていた訳じゃないが、そういや、食べる手が止まっていたかもしれない。見れば、めんまのアイスは3分の2くらい減っているのに対して、俺のアイスは3分の1も減っていなかった。
「あーあー、あ、そうだ!ティッシュティッシュティッシュ!」
当の本人である俺よりも大騒ぎしながら、めんまがティッシュを俺に渡した。
「あ、ありがとなめんま」
「はやく拭いて拭いて!」
と、めんまはアイスを片手に、アイスを溶かしてしまった俺を応援(?)してくれている。
急かされた俺は、なるべく早くアイスの液に浸食された持ち手の棒や自分の指を拭く。そして下のほうの溶けかかる部分を、少しはしたないかもしれないが舐めてどうにかする。
一安心だ(指先に甘いにおいとべたつきが残ってはいたが)。めんまも一息ついている。
「もー、ぼーっとしてちゃ駄目だよ!アイスはね、すぐ溶けるんだからっ!」
「ああ、確かにそうだな・・・って、めんま!」
「え?」
めんまが小首をかしげる。
めんまは気付いていない。めんまが右手に持つそのアイスも、大変な事態になっていることを。
「めんまも溶けてるぞ!」
「えっ?」
さっと片手を確認するめんま。
めんまが持ち手を傾きがちに持っていたアイス。半分以上食べられたアイスの、その下端に、今にも落ちそうになっている水色のしずく。
「あ、あーーー!ほんとだーー!」
ティッシュティッシュティッシュ、とあたりを見渡すめんまの姿が可笑しくて可愛くて、俺は自然とこみあげてくる笑いをこらえることができなかったのだった。
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