過去ログ - ゆきあつ「め、めんま…?」
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155:1 ◆BycwRokz6k
2012/06/23(土) 23:08:11.54 ID:9NasqK3M0
ふいに、めんまのお母さんが、追悼をやめて顔を上げたのが分かった。
両手を静かに膝の上に置いためんまのお母さんは振り向き、俺とぽっぽに上品に笑って見せた。
「・・・今日はありがとうね」
芽衣子も、・・・とそこまでは聞こえたのだが、ここで帰るわけには行かない俺は立ち上がって、めんまのお母さんの言葉をさえぎってしまった。
「・・・あ、あのっ」
「・・・?」
「め、芽衣子さんの部屋とか、あの・・・日記、とか。・・・見せてもらってもいいですか」

相手はめんまのお母さんだっていうのに、こんなにも緊張してしまうとは。手に汗握りつつ、膝立ちでめんまのお母さんの瞳を見つめる。いきなりで不躾だとは思うのだが、どうか、誠意だけは伝わってほしい。
「・・・・・・・・」
めんまのお母さんはしばらくびっくりしたように、なのか、何の反応も示さないまま俺を見上げた。 だが、
「・・・ええ、もちろんよ・・・どうぞ」
と、言ってくれた。


階段を上がり、めんまの部屋だと案内されたそこは、文字道理、空っぽだった。
「え・・・」
きっと引っ越してきたらこんな感じなんだろう、カーペットも敷かれていないむき出しのフローリングは、冷たい。 「・・・・・・」
俺の斜め後ろにいるめんまは目を大きくして、自分の部屋を見ている。
めんまのお母さんは俺の反応に、少しばつが悪そうに笑った。

「・・・お父さんがね、あまりとらわれないほうがいいっていうの。だから、芽衣子の荷物は押入れの中に・・・」
「そうなんスか」
「殺風景で悪いのだけど・・・ああ、日記、だったかしらね?ちょっと待ってね」
どこにあったかしら?と押入れを開け、中に詰まれたダンボールを取り出そうとするめんまのお母さんに、手伝いますよとぽっぽが声をかけた。

* * *
「気をつけて帰ってね」
「はい!」
「ありがとうございます」 ダンボールを何個か開けた末に見つかった。めんまのお母さんには、面倒なことをさせてしまったな。うさぎらしきものの顔がどんとある、水色の表紙。それがめんまの日記帳だった。
(これが・・・めんまの)
これでめんまのお願いの手がかりが見つかるかもしれない。俺たちが靴を履いている間、待ちぼうけのめんまに視線を向ける。めんまはぼんやりと、玄関においてある置物を見ていた。
トントンと爪先で、靴の調子を合わせて、履き終わり、立ち上がった俺は、玄関まで見送りに来てくれためんまのお母さんに頭を下げる。
「今日はわざわざありがとうございました。あの、日記も・・・手間をかけさせてしまってすみません」
めんまのお母さんはゆるく首を横に振った。つくづく綺麗なしぐさをする人だなあと思う。貴族やらを実際に見たことはないが、そんな高貴なものを髣髴とさせる。

「・・・ぜひ、また来てね。芽衣子も、喜ぶと思うの」
「・・・っ、はい、ありがとうございます」
「ありがとうございました!」
挨拶をした後、めんまの家を出た。






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