過去ログ - ゆきあつ「め、めんま…?」
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159:1 ◆BycwRokz6k
2012/08/03(金) 01:34:36.41 ID:QmuaFAGq0

* * *


――いつもより帰りが遅くなってしまった。今日に限って文化祭の準備がこんなに長引くとは。もう4時を回っている。めんまは帰ってきているだろうか――
昨日のアイスが喜んでもらえたので、今日もまた買ってきたアイスの入ったコンビニ袋を引っさげて部屋に入る。

「ただいま」

部屋の扉を開けると、返事が無かったので焦った。どこにいるのかと思ったら、めんまは部屋の真ん中に横になって眠っていたのだった。すやすやと寝息を立てている。
静かに荷物を置いて、(アイスは溶けてしまわないか心配だが、無理やり起すくらいならまたあとでもな)めんまの寝顔を眺めてみる。

さらさら流れる銀髪。
半開きの口から、時々、言葉になりきれていない声が漏れる。
細い手足、白い肌。
まだ隠されたままの青い瞳に早く会いたいけれど、しばらくはこんな風にめんまを眺めているのも良いかも知れない。

疲れているのだろうか?

「・・・・・」

眠るめんまを見て、ふとあることを思い出し、引き出しを開ける。
開いたところにすぐ控えてある、花のついたピン・・・・・。――懐かしい。
これを眺めているといつも思い出す、あの日の出来事を。俺が見た、生きた最後のめんまの姿を。
手に取るようにわかる、あの日の、ふくれあがる思いも、緊張も、落胆も、悔しさも。
そしてそれを思い出しきった頃、いつも――胸がチクリといたむのだ。

ピンクの花びら。真ん中に黄色。

きっと似合うと思って、買ったんだ。
めんまのために。

そっとめんまにかざしてみてから、ふと、寝ているしいいか、と思い、めんまの髪に手を伸ばして、
・・・やはりやめた。コトリ、と、引き出しにしまう。



「ん・・・?」
「・・・めんま」

振り返ると、ごしごしと目を擦るめんま。
ああ、早めに戻しておいてよかった。とホッとする。

「・・・おかえりい、ゆきあつ」
「めんま、眠そうだな。どうした?」
「んー・・・急いで帰ってきたから・・・」
「急いで・・・?」
「んー」

要領を得ない返事だが、可愛いから許そう。
まあ、とにかく走って帰ってきた、ということだろうか、最近特によく外に出かけてるみたいだし・・・。・・・・・。引っかかる、という程ではないが・・・。

ふと机に視線を戻すと、コンビニの袋の下がうっすらと湿っている。しまった!

「・・・あ、めんま!アイス買ってきたんだが、・・・どうする?
・・・・・寝起きだし、やめとくか。じゃあ、食後に――」
「え!アイス?やったあ!」
「食べる、か?」
「うん!ゆきあつありがとう!」

パッと目を輝かせためんまは、先ほどの眠気をどこに追いやったのか、嬉々として俺の手からアイスを受け取った。
これだけ喜んでもらえるのなら、アイスもアイスとして生まれた甲斐があったろうに。そして買ってくるこっちが逆に礼を言いたいくらいだ。

「とけかかってるかもしれない、多分」
「ほんとー?・・・ってわー!ほんとだー!」
「い、いったん冷やしてくるか?」
「う・・・でもお」
「大丈夫だ、一緒に後で食べよう、な、めんま」
「うー、・・・そうする・・・」





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