過去ログ - 安価で世界観共有してSSでも書かないか?
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(千葉県)
[sage saga]
2011/07/09(土) 04:00:39.15 ID:E60Oa47Yo
「家に来ますか?」
この時に「いいえ」と答えていたら、自分はどうなっていたのだろう。
ふとそんな風に考えることがある。
今の生活に不満はない。それどころか満足している。
それでも思うのだ。色んなものを与えてくれたこの人に、自分は何を返せるんだろうかと。
言葉をかけられたのは久しぶりで、最初は何を言われたのかすら理解できなかった。
何かを返さなくてはと思いながらも、「う……」や「あ……」とだけしか言えず、横にいた獣人の機嫌だけが段々と悪くなる。
自分の目の前にいた人間のオス(顔の判別はつかない。人の顔の判別は難しい)は、そんな私に機嫌を悪くするでもなく、細い目を更に細くさせ、線のようにすら見える目で微笑みながら言葉を続ける。
「僕の家の子どもになりますか?」
ここで何かを返さなくては、今や機嫌の悪さを人間に隠す事すらせず、不機嫌に舌を鳴らす獣人に後で何をされるかわからない。
先ほどと同じように言葉を出すのに失敗してはいけないと思い、人間の言葉は正直に言うと理解すらしていなかったけれど、私はこくりと頷いた。
そんな私を見て、人間は嬉しそうに笑い、横の獣人といくつかの言葉をやり取りした後、幾らかの金銭を渡し、汚く汚れた私の手を握った。
この日、この時、この瞬間、私はこの人間の所有物となった。
人間は私を小さな家へ連れていき、温かなお湯で汚れを落としてくれた。
体中の傷に石鹸の泡が染みて痛かったけれど、人間の機嫌を悪くしてはいけないとぎゅっと手を握り締めて我慢していた時に、それまで微笑んでいた人間が少しだけ悲しそうな顔をしていたのを憶えている。
いつ人間の機嫌が悪くなり殴られるのではないかと内心怯えていたのだが、予想に反して人間の手は、まるで陶器でも触るように私を優しく洗い流してくれた。
「じゃあこれとこれ、後はこれを着てください。着かたはわかりますか?」
湯浴みが終わった後、人間から清潔な服や下着をいくつか手渡された。
本当は自信がなかったのだが、機嫌を損ねてはいけないと思った私は頷いて、着慣れない下着に足を通し、布で出来たシャツを羽織ろうとした。
だが、焦っていたのか、上手く袖から手を出せず、もごもごと腕を動かし続けるだけの時間が流れる。
そんな私を見ていた人間は、しびれを切らしたのか両手をぬうっと私へ伸ばしてきた。
殴られると反射的に思い、体を強ばらせる私を見て、人間はビクッと手を止める。
怒りに顔を赤くする人間の顔を想像し、おそるおそる表情を伺うと、湯浴みの時にしたような悲しそうな顔をする人間がそこにはいた。
「大丈夫です。痛いことはしません」
人間はそう言って、表情を笑顔に戻し、服の袖から抜け出せない私の手を優しく袖から出してくれた。
殴られなかった安堵で胸をなでおろしている私へ、人間は言葉を掛ける。
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