520:LX[saga sage]
2012/02/12(日) 19:31:05.54 ID:hKj2xVWl0
「まさか、この帽子のおかげで助かった、なんてことはない、よなぁ」
二日酔いでフラフラしながら当麻は大学の中を歩いていた。
「当麻クン? せめてこれ被っていきなさいな。うちのひとのだけど、ほとんど使ってないし。あなたのその頭、イッパツだからね?」
ウチでゆっくりしていきなさい、という美鈴と旅掛の話を「就職活動しないといけませんから」と丁重にお断りする当麻に、
じゃぁ、気休めだろうけれど変装ってことで、と美鈴が持ってきてくれたのが、帽子とサングラスであった。
いやいや結構ですから、もうお気になさらず、とこれまた断る当麻に、「わしのものは気にくわないのかね」という旅掛の一言。
(さすがに、あそこまで言われたら断れねーし)
今日は追っかけられたら走れねぇな、と独り言をつぶやきながら、それでも緊張しながら彼は入国管理所を抜けたのだが、
――― 何も起きなかった ―――
のである。昨日の朝の大騒ぎはいったい何だったのか、夢じゃなかったのか、と思えるくらい、拍子抜けの学園都市入りであった。
(結局、お目当ては美琴、ってことなんだよなー。すげーな、あいつ)
改めて、自分はとんでもない女の子と付き合っているのだ、と思い知らされる当麻であった。
「就職活動しなければなりませんし」と言い切った彼であったが、大学の就職部のウェブサイトに出ている内容はおとといと同じだった。
もしかするとウェブに載っていない情報があるかもしれない、と念のため足を運んでみたアナログの掲示板に出ている内容もまた同様であった。
(はー……あーあ。ああ見栄切ったのはいいけど、ホントどうしよう。こりゃマジでバイトで食いつなぐしかねーかも……
いやいや、そんなことだと、いつまで経ってもあいつのとこ行けないし)
だから、あたしが稼いでくるから、と言い切った美琴の顔が思い浮かぶ。
「冗談じゃねェよな。あいつの稼ぎに頼るなんて、そんな情けないことは天地がひっくり返ったってできねーよ……」
「誰の稼ぎに頼るって?」
椅子に座って二日酔いの頭をコンコンと叩いていた当麻の上から、突然女性の声が降ってきた。
「上条当麻。久しぶりだな……ってお前、酒臭いな。二日酔いか?」
「雲川、先輩……?」
まさに、雲川芹亜(くもかわ せりあ)、そのひとだった。
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