563:LX[saga sage]
2012/03/04(日) 21:20:36.41 ID:uPuC0Jn70
「そ、そうなのですか?」
「うん。昨日、あいつを実家に連れて行って、その場で決まっちゃった。
でもね、あいつも頑固でね、私のカネで暮らしたくない、自分で食えるようになるまで結婚しません、メシが食えるようになったら、私を迎えに来るから待ってろって♪」
「はぁ……そうなのですか……」
「あ、それでね、土曜日、あいつ面接があるから、あんたとのツーリングは延期するしかないんだけど、聞いてるよね?」
「それは聞いていました。でも、お姉様<オリジナル>と結婚するというお話は当麻さんからはありませんでした、とこのミサカはショックを隠せません」
美琴と話をしているのは検体番号10039号。御坂妹の次にこの話をしなければならないミサカである。
「ああ、それはほら、アイツ鈍感だから、あんたも解ってるでしょ、そのことは? ま、私が先走っちゃったかもしれないけれどさ?」
いっけなーい、アイツに念押ししとけば良かった、と美琴は思う。
当麻が、アイツが自分から言うはずがないし。
……でも、あのミサカ10032号、御坂妹には絶対に先に話をしておかねばならないし、この子だって安心は出来ないし。
とにかく先手必勝で、アイツはわたしのものになった、と言うことを、少なくともこの二人には釘を刺しておかなければならないもの。
ロシアの10777号も危ないけれど、さすがそう簡単には学園都市に戻って来れないだろうし、とりあえずはやはりこの子たちよね、と。
美琴はそう考えていた。
後で、美琴は悔やむことになる。
あまりにも浮ついていた、もう少し待って、頭を冷やしてから、どう彼女たちに説明するかきちんと作戦を考えてから行動すべきだった、と。
体調のせいもあったかもしれない。ともすれば、精神状態が安定しにくい時もある「あの時」に、よりによってこんな面倒な話を持ち出すべきではなかったと。
後からなら、何とでも言えるわよね、と彼女は後に自嘲した。
不安だった。
自分の両親に引き合わせて、その場で酒が入っていたとはいえ、当麻の口から「結婚します」という意味の言葉を聞き、ようやくここまで来たかと舞い上がった自分の心は、その翌日あっさりと「雲川芹亜」なる年上の女性に叩き落とされた。のみならず、挑戦状まで叩きつけられた。
ぐらつき、不安におののいたあの時のわたし。
その裏返しで、わたしは、一番弱い(と考えた)、自分の妹達<シスターズ>に強気に出ることで自信を持とうとした。
そして、私が一番警戒していたあの子、検体番号10032号を皮切りに、同じく当麻に好意を抱いていた検体番号10039号を叩くことでバランスを取ろうとしたのだ。
なんという卑怯者だったのだろう。
あの子たちがどう思うか、なんてことは考えても見なかった。考えたつもりだった、と。
しかし、それは自分の立場での、自分本位での考え方でしかなかった。
その時の彼女は、そんなことまで考えもせず、行動に移してしまったのだった。
後悔、先に立たず。
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