565:LX[saga sage]
2012/03/04(日) 21:26:56.97 ID:uPuC0Jn70
「前にも言っていましたね。何故検体番号10039号はこのミサカが羨ましいのですか?」
御坂妹が静かに問いかける。
「このミサカは死にかけたのです。そう、最後の実験従事検体がわたし。
このミサカの身体は、そのせいかあなたを含む他のミサカより大きく損傷した部分があります。
一時期は生命維持も危ぶまれたことすらあります。そんなミサカを何故羨ましいと?」
御坂妹は不思議そうに、赤い涙目の検体番号10039号を見つめる。
「検体番号10032号? だから、あなたは当麻さんに唯一、たった一人だけ別格扱いされたのです。いいですか?
検体番号10032号以外のミサカは、上位個体<打ち止め>以外、お姉様<オリジナル>のクローンの一人でしかありません。
検体番号10032号だけが、<御坂妹>という二つ名を他ならぬ当麻さんから付けられ、あらゆる場面において、妹達<シスターズ>のなかで特別扱いされてきました。
検体番号10032号は、そのことに気づいていないのですね」
「!」
(そう、なのですか)
目を見開き、驚く検体番号10032号、御坂妹。
「そうですとも。いいですか、検体番号10032号? もし……もしですよ? 検体番号10032号が当麻さんに興味がないのであれば……このミサカにその座を譲って下さい」
「……!!」
「このミサカは当麻さんが好き。あのひとの傍にいたいのです。検体番号10032号、どうなのですか?」
「出来ません」
瞬時にきっぱりと言い切った御坂妹。
「このミサカの記憶は、体験は、このミサカのものです。誰にも譲れません。検体番号10039号があのひとを好きなことはわかりました。
ですが、あのひとが特別な存在であることを、このミサカは誰よりも一番良くわかっています。
検体番号10039号に深く感謝します。このミサカにとってあのひとが何なのか、今、はっきりしました」
えっ?と言う顔の検体番号10039号。
「こうしてはいられません。ミサカは速やかに行動を起こします」
そういうとぺこりとお辞儀をした御坂妹は脱兎の如く駆けだした。
「敵に塩を送ってしまったのでしょうか、それともヤブヘビ……?」
呆然と佇んでいた検体番号10039号が、ぽつりとつぶやいたのは、それから暫く経った後だった。
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