628:LX[sage saga]
2012/04/01(日) 20:21:37.70 ID:asRSIU/H0
重い気分で当麻は寮に帰った。
正直、酒でも飲んで帰ろうかとも思ったくらいである。
だが、正直それは怖かった。酒の勢いで誰かに当たり散らすかもしれない、と思ったからだ。彼は、自分が何をしでかすか全く自信がなかった。
(情けないヤツ)そう思うことで、心を奮い立たせよう、ともした。
寮に戻り、ドアを開けた瞬間、彼は予想もしなかった光景を見る。
「おっ帰りー、勝手に来てごめんねー?」
エプロン姿の、美琴が立っていた。
「えへへ、どう、これ? 驚いた?」 茶目っ気たっぷりに笑う美琴。
当麻は声も出ない。
なぜなら、さっき、その姿を思い浮かべてしまったから。
但し、それは美琴ではなく、御坂妹……。
思わず、彼はそこにへたり込み、土下座のスタイルになる。
「ちょ、ちょっと、何よそれぇ?? まさか酔ってる? 下から覗こうなんて思ったって、今日はジーンズだからねー♪」
顔を赤くした美琴は、次の瞬間、あわててキッチンへ戻る。
「あ、ちょっ、お鍋、お鍋! 焦げちゃうからちょっと! あぁんもう! アンタ、早く手を洗ってきなさいよ!!」
美琴の声が、グサグサと心に刺さる。
(何も知らない、何も知らないんだ、美琴は!)
とても、言えない。言えないけど、言わなきゃならない。何も知らない、こいつに。
俺は、お前を、愛してたのに。お前と家庭を築きたかったのに。
「ひゃー、危なかったぁー。ちょっと、アンタ、何やってるのさっきから? なんかあったの?」
さすがに美琴もおかしいと思ったのだろう。鍋をIEレンジから外すと当麻に近寄る。
「あんた、どうしたのよ? 具合、悪いの?」
「すまん、本当に、すまん」
「……まさか、あんた、会社、落ちた?」
心配そうな顔でのぞき込む美琴。
当麻は耐えられなかった。もう美琴の顔が見れない。
「お前に、本当に、申し訳ないことをしちゃったんだ。ごめん。本当に、ごめんなさい!」
「え……? ちょっとあんた……それ、なに? どういうことなのよ、なんなの、それは……」
美琴も、よほどのことがあった、とわかったのだろう。声が低くなる。
「許してくれ、ごめんなさい。俺が全部悪いんだ。全部、俺のせいなんだ」
「……言って、当麻。わかったから、言って、わかんないから」
当麻は強張った美琴の顔を見て、もう一度頭を下げ、平身低頭して、事実を告げた。
「あいつに、御坂妹に、子供が、出来た……」
美琴はまっ青になる。 彼女も、言葉が出ない。
「俺の、子だ」
ポットがピーと、
鳴いた。
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