705:LX[sage saga]
2012/05/06(日) 22:57:53.92 ID:RpQV+FS/0
「美琴ちゃん……それは言い過ぎじゃないの?」
娘の剣幕に驚きつつ、やんわりと美鈴は合いの手を入れる。娘の本心がどこにあるかを探る為に。
「だってそうだもん! あの子はね、最初からそのつもりでアイツのところに押しかけたんだから!
私にアイツを取られると思って、子供をかすがいにして、離れられないように仕組んだの!
あの子、そう言ったわ、はっきりと、私の前で!! 恥知らずよ!
そんなあの子に、あのバカったら、まんまと嵌められて、子供を作られて……」
「1回、でか?」
何回か逢瀬を重ねたのではないか、と旅掛はつぶやくが、美琴はそれも聞き逃さない。
「そこまで知らないわよ! だいたい聞きたくもないわ!!」
――― パンパン ―――
「美琴ちゃん?」
興奮する美琴を落ち着かせようと、美鈴が手を叩く。
「……ごめんなさい、お父さん……大きな声出しちゃって……あいつがなんか言ったような気がするけど、全然覚えてないし」
功を奏したか、我に返った美琴が静かになる。
「……まぁ、出来ちゃう時ってのは、そんなもんかもな……」
「あなた!? 随分と実感こもってるけど、経験でもあるの?」
今度は美鈴が、実感味がこもった夫のつぶやきに敏感に反応する。
「おいおい、真剣な話なんだから、つまらん事で脱線させないでくれ。そんなことは、ない!」
ええっ? と自分に向いた妻の矛先をかわすべく、旅掛は断言する。
「ふーん、まぁ良いわ……それじゃ、彼も被害者みたいなもんじゃないの? まぁ、避妊すれば、ってそんなヒマなかったのかもね。
女がその気だったら、男なんかちょろいもんだし……」
「お母さん……?」
「美鈴……?」
昔を思い出すかのような美鈴のつぶやきに、今度は夫・旅掛と娘・美琴が絶句する。
「え、何その顔……やだ、ちょっと? え、何よ、何勘違いしてるのよ、バカね、私は潔白ですからね!」
あわてて否定する美鈴に旅掛がふふん、という顔で答える。
「ふん、これでおあいこだ。……さて、で、どうするね。向こうは、その、破談も覚悟してるようなんだがな……」
旅掛が何気なしに話を美琴に振る。
両親は娘の反応を注視する。果たしてどんな答えが彼女から返ってくるのか?
「そんなの……わかんないわよ!」
(あら、そうなの?)
美鈴は、その答えに頭をフル回転させる。
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