706:LX[sage saga]
2012/05/06(日) 23:02:16.66 ID:RpQV+FS/0
美鈴は考える。
(娘の答えをどうみる?)
彼に愛想が尽きていたならば、当然こう言うだろう。
「当たり前でしょ、破談に決まってるじゃない!」と。
だが、そう言わなかった。あの子は「わからない」と言った。
なぜ、「わからない」のだろうか?
全部ご破算にする選択をしていないからだ。
今のこの返事、そしてさっきの怒り方から想像するに、二度と顔も見たくない絶交よ、というほど頭に血が上っているわけではなさそうだ。
その、クローンの「あの子」の策略に嵌った彼に怒っているだけだ、と。
簡単に許せる話ではないことは当然だ。私たちだってその点は同じだし。
ただ、どういう形で落とし前を付けるか、その方法が決まっていないから、だから「わからない」という答えになるのだ。
ふーん、そういうことなのか。
一昨日の彼の答えから察するに、上条くんは、娘には未練があるようだ。
娘はもともと彼に惚れていた訳だし……じゃ、わざわざぶち壊す事もないでしょうね。
それに、仮によりが戻った場合、こちらは非常に有利な、強い立場をキープ出来るし。
一瞬のうちに、頭の中でそう話を纏めた美鈴は、静かに宣言した。
「元々急ぐ話でもなかったし、放っておけばいいんじゃないのかしら」
夫が余計なことを言って、話をぶち壊されてはたまらない、と彼女は考えた。
「お母さん!?」
美琴が美鈴を睨み付ける。
(まぁ、あなたはそう言うわよねぇ) でも予想の範囲よ、と美鈴は心の中で娘に言う。
「美琴ちゃんが、もう二度と顔も見たくないなら、これで終わりだし。彼がその子と結婚するなりどうするなり、ご自由にってこと。
今すぐ宣言しちゃってもいいけれど、そうしたら感情的に見られちゃうけど、あなた、それでもいい?
まぁ、向こうからは言い出しにくいでしょうから、嫌がらせっぽく時間をかけて、それから改めて破談にするというのもあるけど?
向こうはとにかく、ウチが動かなければ何も出来ないわけだし、ね?」
美鈴は含みを持たせるように、そう言う。
旅掛は直ぐにその裏を読み、(いいのか、本当に?)という顔で彼女を見る。
娘、美琴はどうしたらよいか分からない、と言う顔である。
美鈴は、娘の本心を探るべく、もう一度問いかけを仕込んでいた。
(破談にしたら、彼はその子と結婚しちゃうけれど、美琴ちゃんはそれでいいのかしら?)と。
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