716:LX[saga sage]
2012/05/13(日) 20:10:47.69 ID:5Ilf9fTa0
生気のない唇が動いた。
「あ」
当麻が目を開くと、まさにいま、彼女が目を開くところだった。
あわてて、彼は彼女から飛び離れる。
「お、、起きた……起きてくれたのか、御坂妹?」
寝起きのせいか、違う理由のせいか、彼女の目の焦点が定まっていない。
「……最終個体<ラストオーダー>……?」
「しっかりしろ、御坂妹」
小さいが、元気づけるように力強い声で当麻が呼ぶ。
彼女の目が、当麻に向き、焦点が合う。
「あ、あなた……? なぜ、ここに?」
今にも消えそうな、か細い声。
そして、彼女のその目は、かつての、あの時の、第10032次試験の時の目。
「バカ野郎! しっかりしろ!」
しかりつけるように囁く当麻。
だが、彼女は再び目を閉じると震える声で答えてきた。
「ごめんなさい……」
「ミサカは……わたしは……とんでもないことを、してしまいました……」
「わたしは、お姉様<オリジナル>にも、あなたにも、合わせる顔がありません……」
泣いているのだろうか、だが、涙は流れていない。当麻の不安は高まる。
「止めろ、もういい、もういいんだ、もう何も言うな」
だが、聞こえないのか、彼女の懺悔の言葉は続く。
「私は、お姉様<オリジナル>を怒らせて、そして泣かせてしまいました。わたしは、取り返しのつかないことをしてしまいました」
「美琴が……来たのか」
それは、彼にとって初めての話。
あの美琴だ、思い切りののしっただろう、と当麻は思う。
「病院に、お姉様<オリジナル>がいらっしゃいました。見ていられないほど、やつれて、疲れ果てていて……みんな、ミサカのせいなのです」
「……」
「お姉様<オリジナル>は、最初、あなたを酷い言葉でののしりました。
あなたがこのミサカをたぶらかしたのだと、お姉様はあなたと別れるといい、泣いて私に謝りました。
あなたとは別れるから、ミサカにも別れろと、そしてこの子は堕しなさいと」
当麻は息を呑む。あの美琴が、そんなことを……
「ミサカが、それは違います、私が進んであなたと強引に関係を持ったことを言うと、お姉様<オリジナル>は泣いて怒りました。
そして、わたしを泥棒猫、と」
「あいつ……」
「その通りなのです。私は、あなたとお姉様<オリジナル>に一生消えない傷をつけてしまいました。もう、ミサカには」
「バカやろう!」
最後の言葉を言わせまいと、当麻はそう小さく叫んで、軽くこつんと御坂妹の頭をこづいた。
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