747:LX[saga sage]
2012/06/03(日) 19:46:44.01 ID:1JS8rMWZ0
御坂妹はごく自然に姉<オリジナル>の美琴に会釈して、挨拶をする。とはいえ、若干その顔は固い。
「有り難う御座います。お姉様<オリジナル>もお変わり無く」
「お腹の子は、どうなの?」
美琴の声も固い。
「先ほど、診断を受けて参りました。順調に育っている、とのことでした」
「そう。あんた、ちょっとコイツと話あるから、先に部屋へ戻っていてくれるかな? 直ぐ済むから」
御坂妹は、当麻の顔を見る。よろしいのでしょうか? という問いかけの、目。
当麻も目で、かまわないから部屋へ戻っていろ、と答えを返す。
美琴は、その二人の暗黙の会話をめざとく読んだ。
「はい。それではミサカはお先に失礼します」
そう言うと彼女はエレベーターに乗って上に上がってゆく。5階でエレベーターは止まった。
「アンタたち、そこまでもう行ってるんだ。たいしたものよね」
揶揄するかのような彼女の物言いに、当麻がやんわりと答える。
「世話してれば、それくらいになるさ。お前とだってそうだったろ?」
「ふん……まぁ、そうだったわね」
そう、確かに当麻と美琴の間では、既に「夫婦の会話」とでも言うべき会話がしょっちゅう成立していた。
「アレはどうしたっけ?」
「それは、ほら」
「あー、そうだったな、すまん、同じ事を聞いてしまった」
(アンタねぇ、それってあの子と自分との関係が夫婦並みになってるってことなんだけど、全然フォローになってないわよ?)
美琴は、予想外の自分の反応に少し驚いていた。そういえば、前にはそんなこともあったかしらね、と。
(まるで第三者よね、私……なんでだろ? ……あぁ、そっか……もう、私は……)
美琴は、思わず笑いたくなった。もう、自分は、自分を当事者だと思っていないのだ、と。
「御坂妹と会ってて、怒ってるんだろうな」
「うーん、確かに前はそうだったけど。今はなんか、もうそう言う雰囲気じゃないのよね。そう、憑き物が落ちたって言うか。
あんたたち見ていて、お似合いだと思うもん。なんか私一人、怒ってるのってバカバカしくってさ」
美琴は、冷めた顔でどこか他人事のように淡々と話をしてゆく。
だが、その言い方に、当麻の方が驚く。
「どうしたんだよ美琴……人ごとのように……それに、これは違うんだ」
「はぁ、何言ってんの? 何が違うのよ、どこが違うって? もういいの。あの子、私に気を遣ってただけよ。本心は違うのよ?
あの子は、アンタが好き、大好き。アンタを愛してる。アンタ、まさかそんなこともわかってないの?」
当麻の言葉に、美琴は反応したが、それとて以前とは比べものにならないほど静かなものであった。彼女は言葉を続ける。
「もし、気が付いてないなんて言うんだったら、それこそ私、アンタを軽蔑するわ。怒る。
姉<オリジナル>として、アンタを許さない」
「お前、じゃ俺がお前のことをどう思ってたか、いや今だってどう思ってるか、俺のことなんか、もうどうでも良いのか?」
「そうは言ってない。でもね……私、もう、あんたを愛せない」
美琴は、遂にそう宣言した。
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