過去ログ - 新・学園都市第二世代物語
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803:LX[saga sage]
2012/07/22(日) 20:55:06.42 ID:xs0nTr/s0

「こんばんは、お姉様<オリジナル>! 珍しいですね、あのことですか?」

「こんばんは。さすがね、そのとおりよ、未来(みく)」

美琴は、懐かしい場所を訪れていた。

彼女が高校での3年という月日を過ごした、女子寮である。

自分と同じ高校の制服を着ることになった、御坂未来(みさか みく)、検体番号20001号、最終個体<ラストオーダー>こと「打ち止め」。

美琴は、そこにかつての自分を見るような思いだった。

「あの人」の心の傷に触れたくないから、自分の能力の問題から、そして「お姉様<オリジナル>の後追いはいや」という思春期の反発心から、彼女は常盤台中学に進学しなかったことは前にも述べたとおりである。

しかし、高校では彼女は美琴と同じ高校を選ぶことになった。

何故かと言えば、それはその高校に、一時期ではあるが彼女の親代わりを務めた黄泉川愛穂、その彼女が今も先生をしていたからである。

そして、未来から連絡を受けた一方通行<アクセラレータ>が、「いちいち連絡してくんな、クソッタレ」と言いつつも、密かに安心していたのは紛れもない事実であった。

「……このミサカにもちょっと手に負えないかなって……。

昔は、あの頃はみんな、今のように各個体の個性もほとんどなかったし、だから、上位個体であるミサカの命令で全員が一致乱れずに行動も出来たんだと思う。

でもね、今は随分違う。どのミサカにも個性が表れているの。ミサカのみんなが、それぞれ違うミサカになりつつある。

だから、昔みたいにわたしが、このミサカが命令しても、他のミサカが素直にはいそうですかと言うことを聞いてくれるかは未知数なの。

最悪の場合、ミサカが『力ずく』でやることは出来るけれど、それは今となっては本当に最後の手段になるから、滅多なことでは使いたくないのね」

ため息をつきながらも慣れた手つきでコーヒーを入れる未来。

(あいつに仕込まれた、って感じかな) 

その姿を見る美琴は、ふと一方通行<アクセラレータ>を思う。今はどうしているのだろう? と。

「それがね、ちょっとまずいことになっちゃってるのよ……ううん、まずいどころじゃない、あんた達、危ないのよ?

先日、統括理事会の中の人に呼ばれてね、いよいよとなったら、あんたの力を使うことになるって脅しまで言われちゃって。

今回はホント参っちゃってるのよ……」

頬づえをつき、物憂げにスプーンでコーヒーをかき回す美琴。

「あら、お姉様<オリジナル>ともあろう人が、随分と弱気なお言葉を? なんか、珍しいですよねー」

そんな美琴に、未来は軽い調子で皮肉を飛ばす。

「失礼ね。いいじゃないの、姉に愚痴ぐらいこぼさせてよね」

どこか心ここにあらず、と言う感じの美琴に、未来はこれならどうだ、と直球を投げてみた。

「時にお姉様<オリジナル>、本当に、いいんですか? あれだけ好きだった人を?」

だが、美琴はその質問に答える前に、彼女に逆に問いただしてきた。

「未来? 念のため聞くけど、今、あんたネットワークに流してるの、これ?」

「いいえ? お姉様<オリジナル>がいらっしゃる、と聞いた時から私、本当はいけないんだけど繋いでないの。

だからお姉様<オリジナル>、何を話しても大丈夫だから、安心して?」

にっこりと笑う未来。屈託のないその笑顔を、汚れなきその笑顔を美琴は羨ましく思う。



打算で動くような「おとな」にだけはなりたくなかった。

だが、その「おとな」にならざるを得なかった自分。

汚れてしまった自分。

だけど。

身勝手だとは思うけれど、自分の勝手な願いだけれど、この子には、この子の笑顔は曇らせたくない。

美琴はそう思うのだった。



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