816:LX[saga sage]
2012/08/05(日) 23:04:55.06 ID:7azhN7K10
美琴は頭を抱えた。
前言撤回。
なんという、なんたるお馬鹿さんなのよあんたは、と思う。
感覚を共有出来る、しかもベースが共通な妹達<シスターズ>。
そこに、一人のミサカが、自分のお気に入りのラブロマンスシーンを繰り返し流したらどうなる?
しかもみんなまだ純情(うぶ)な頃だってのに、刷り込みしてどうするのよ……自分でライバル増やしてって、あんたバカァ?
今回の事の起こりの根源の一つは、あの子の夢からか、と。
「すごいですよー、検体番号10777号なんか、検体番号10032号の夢をコピーしちゃってますからねー。
彼女の夢、私も見たことがあるんですけれど、寸分違ってないんです。
でも唯一違うのは、闘ってるのは検体番号10032号じゃなくて、自分、そう検体番号10777号自身なんです。
完全になりきってたんですよ。私ですら『あれ、検体番号10777号って、あの場にいたかしら』って一瞬思ったくらいですもん」
……検体番号10777号か。えーと、ロシアに居る子よね……? そう、あの子もアイツに惚れてたわよね。
酷寒の地で出会った、自分のクローン。アイツへの思慕を隠さなかったミサカの一人。
「お姉様<オリジナル>はロシアにいるあの子とは以前会ってますよね? 覚えてます?
検体番号10777号の自慢の一つが、お姉様<オリジナル>と一緒に闘ったことなんですよ?
今回こそは、って意気込んでたんですけれど、まだ飛行機のチケット買えてないみたいです。出遅れてますよね。間に合わないかも……」
目ざとく、未来は検体番号10777号の情報を美琴に教える。
(お姉様<オリジナル>たら、あなたのこと忘れてたみたいよ? なんて言ったらあの子、泣くだろうな)と思いつつ。
その美琴は、あの子は今回も会えないのだろうか、あんなに会いたがってたのにちょっと可愛そう、と考えていたが、未来の「間に合うかな」という言葉にようやく本題に入るきっかけを見いだしたのだった。
(やれやれ、長い前ふりだったわね)と彼女は心の中で自嘲する。
「で、一体全体、今、妹達<シスターズ>って、ここに何人いるわけ?」
「本日夜7時現在で、学園都市内にいるのは1597名です。
現在、学園都市への直行便に乗っているのが11名。日本国内にいて、学園都市エントランスに向かっているのが27名。
従って、明日の朝8時20分にデリーからの直行便で到着する検体番号12053号を最後に一区切りでしょうか。合計1635名、ですね」
スパッと即答する未来の話に、美琴はへー、と言う顔をする。
「わりと少ないのね。私、アンタらのことだから、もっと大量に押しかけてくるのかと思ったんだけど」
なんか拍子抜けよね、と冗談っぽく軽い調子で美琴は言葉を返した。特に考えもせずに。
だが未来からは、美琴が予想もしなかった反応が返ってきたのだった。
「お姉様<オリジナル>? 皆がみな、裕福な生活をしているわけじゃないんですよ? 生きるために必死なミサカが沢山いるんですよ?
そんな言い方はないですよ! そんな酷いことをよく言えますね!? だいたい、それに……」
いつになく激昂した未来に、美琴は驚く。
未来の目から涙がこぼれ落ちていたからだ。
「ちょ、ちょっと未来? どうしたのよ、何怒ってるの? そんな泣くほどのことなの?」
「……う、ぐすっ、うわぁぁぁぁぁーん!」
ついに、未来は本格的に泣き出してしまった。
――― また、何かが起きている? ―――
美琴は泣く未来を見て、言いようのない不安に襲われたのだった。
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