834:LX[saga sage]
2012/08/19(日) 21:52:46.21 ID:4tGOQ92R0
そしてもう一つ。
今まで、沢山のミサカの死の瞬間は、ネットワークで流れてきており、知らないわけではなかった。
しかし、今回、初めて感じた「自分の死」というものの衝撃は大きかった。
そんな時に、検体番号10032号の「悪夢」が流れてきたのだった。
実は彼女の夢はこれが初めてではない。だが、この時に見たあの「悪夢」は、彼女にとって今までとは全く違うものに思えた。
検体番号10032号が感じた「死」の恐怖を、検体番号10033号は、今までになく深く感じ取っていた。
第10032次実験での検体番号10032号に、彼女は自分をダブらせていた。
一方通行<アクセラレータ>に一方的にあしらわれる検体番号10032号。
それはあの時の自分にとてもよく似ていた。
そこへ、彼 ――― 上条当麻 ――― がやってくる。
今までは、うとましい、好ましい人間には思えなかったのに、今日はどうしてだろうか、彼がとても待ち遠しかった。
<他の誰でもない、お前を助ける為に闘うって言ってんだ!>
検体番号10032号に向かって放たれた言葉なのに、その日は、まるで自分に向かって言われた言葉のように聞こえた。
そして、あの、叫び。
<お前は世界にたった一人しかいねぇだろうが!>
今まで、好きになれなかった彼、上条当麻の言葉が、ずどん、と自分の中に収まった。
泣いている自分に気が付いたのは、少し後の話であった。
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そして、今。
検体番号10033号は戸惑っていた。
どうして涙がこぼれているのだろう、あの時とは、全然違うのに?
いや、そもそもどうして自分はここに来たのだろう?
彼に会いたかったから……? そう。会いたかったから。何故だかわからないけれど、無性に彼に会いたかった。
検体番号10032号を助けた、いや妹達<シスターズ>を、ううん、違う。このミサカを助けてくれた、彼に会って、御礼を言いたかった。
それから、たくさんお話をしてみたかった。いっしょにいたかった。
そして……もし、彼が望むのであれば、私は自分の全てで、彼を好きなだけ、思う存分に悦ばせてあげたかった。
……なのに、彼は、お姉様<オリジナル>に向かって「愛してる」って。
それって、ミサカを抱く時に男が似たような言葉を言うけれど、彼もお姉様<オリジナル>を抱きたいのだろうか?
それなら、私がしてあげるのに。いくらでも悦ばせて上げられるのに、そう、絶対にお姉様<オリジナル>よりも上手に。
……何だろう、この不思議な感情は?
検体番号10033号は気が付いていなかった。それこそが「恋」というものであることを。
そして、運命は皮肉だった。
彼女が「初恋」というべきものを明確に感じたイベントにおいて、それを打ち砕く出来事が起きたのだから。
そして、新たに芽生えた感情があった。
ひとが、「嫉妬」と呼んでいる、その感情が今……
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