842:LX[sage saga ]
2012/08/26(日) 21:41:05.94 ID:s3IR9i8w0
「紅茶、入ったわよ?」
美琴がそう呼ぶと、未来はアルバムを名残惜しそうに置き、テーブルへとやってきた。
「なーに、自分の方が可愛かった?」
そんなことで、あのアルバムを見ていたわけはあるまい、と美琴は思うが、わざと彼女はそう言ってみた。
「そうですね。でも、あの頃は、ミサカは鏡を見たことがなかったので、自分がどんな女の子だったのか全くわからないの……」
美琴ははっとする。
そうか、この子は、あの頃はずっと培養装置の中にいたのだ……と。
「私、会ってみたいな……」
小さく、ごく小さく独り言をつぶやく未来。
そのつぶやきを美琴は聞き取った。
(ふーん、会ってみたいのか)
クローンに、親はいない。強いて言えば、美琴が母体であるが、年が近いせいもあり、やはり親とは言い難い。
「二人とも、あんたたちのことは知ってるわよ?」
えっ?と言う顔で未来が美琴を見る。
「父さんは入ってこれるから、タイミングさえ合えばOKよ。問題は母さんね……」
そう言って、美琴は閃いた。
認めさせればいいのだ。この学園都市に。
(そうよ。今なら、きっと……)
「お母様は入れないのですか?」
不思議そうな顔で未来が訊ねてくる。が、美琴は明るい顔で答えた。
「うん。今まではね。前に戦争あったでしょ? あの時に、母さんは私をここから脱出させようとしたんだって……。
それで今でも要注意人物のリストに入ってるらしいの」
「どうして? 何故そんなことを? お姉様<オリジナル>はレベル5じゃないですか」
「だって戦争よ? あんたの彼みたいに何でも反射出来れば死なないかも知れないけど、私はそこまでは無理」
未来は思い出す。
あの人は何にも言わないけれど、目覚めない私を助ける為にあちこち飛び回り、大変な思いをしたということを。
ミサカネットワークの情報では、断片的なものしか入手出来なかったけれど、その内容は想像を絶するものだったことを。
そして、あの子(おんな)との闘いも。
……。
考え込んだ未来に、美琴は明るく言う。
「ま、そんな訳だけど。大丈夫よ、結婚式には出られると思うわ。ううん、絶対に来てもらう。この御坂美琴の結婚式に、両親が揃わないなんて事が有るわけがない!
……そう、その時、あなた、妹達<シスターズ>を代表して出なさいね、いいわね?」
一瞬ぽかんとする未来。
だが、次の瞬間に、未来は顔を輝かせて微笑みを浮かべた。
「おめでとう御座います、お姉様<オリジナル>!」
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