853:LX[saga sage]
2012/08/29(水) 00:00:25.29 ID:hMizSivz0
とある日のこと。
大学の門を出た当麻を呼び止めるものがいた。
「こんにちは、上条さん。お久しぶりですね、とミサカは一般的な挨拶からスタートします」
「お、おう、こんちは。えっと……お前、19090号だよ、な?」
「はい。ですが、今やこのミサカにも名前が付いています。出来ればそちらで呼んで頂けるとミサカはとっても嬉しいのですが」
えーと、と当麻は携帯を見る。<ミサカ・ネーム一覧>というデータボックスにアクセスし、番号をピピピと入力する。
「あ、琴子さん、か」
「むう……元から学園都市にいるミサカの名前くらいは早く覚えて欲しいものです、とミサカは少しふくれてみます」
そう言いつつも、まんざらではない表情の御坂琴子(みさか ことこ)こと検体番号19090号。
「ごめんな。一斉に名前が付いたもんで、なっかなか番号と名前が一致しなくてさ。早く覚えるように努力するよ」
「宜しく御願いしますね。とはいえ、正しい番号でこのミサカを呼んで頂けたのは嬉しいかぎりですが」
ニコニコする琴子の顔を見ていると、当麻も少し嬉しい気持ちになる。
(随分と表情が豊かになったよな……昔とは大違いだよ)
「あはは。それくらいならもう、さすがの上条さんでも4人の区別は十分つきますですよ」
明るく活発、積極的な検体番号10039号。
生真面目で、少し理屈っぽい検体番号13577号。
派手目でいつも華やいでいる検体番号19090号。
そして……検体番号10032号。
全員が違う個性を全面に出している。常盤台中学の制服に暗視ゴーグル、という画一的だったあの妹達<シスターズ>はもういない。
「え、本当ですか? どこで、どこでこのミサカがミサカであるとわかるのですか? 御願いです、教えてくれませんか?」
そう言いつつ、琴子は当麻に向かってずい、と身を乗り出してくる。
彼女の香水の香りが鼻に押し寄せる。香水を普段から付けているのは10039号、そして19090号の2人だけである。
実は美琴もつけてくる時がある。それは、彼女からのとあるサインなのだが、それは内緒にしておこう。
で、この3人の香りはみな違う。当麻は彼女らからブランドを聞いたことがあるのだが、興味がなかったので直ぐに忘れてしまい、美琴からは電撃をくらったこともあった。
(化粧が一番上手なのはお前だから、って言ったらまずいかな)
目と鼻の先で、何やら期待を込めた目で見つめる琴子を見ながら、答えようとしたその瞬間、
「ちょっとアンタ、なにやってんのよ?」
よく知った女性の声が響く。風に乗ってきた、ツンとするイオン臭い空気とともに。
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