過去ログ - 新・学園都市第二世代物語
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888:LX[saga sage]
2012/09/30(日) 20:55:31.00 ID:21DH1Xvd0

「私だってね、産まれてくる子はね、気にくわないとか憎たらしいとか、そうじゃないんですのよ?

でもね、その子(麻美)はね、どうしても私は許せないの。第一、そこまでやるんだったら駆け落ちでもなんでもして初心貫徹すべきでしょ? 

それをなんですか、優柔不断ていうか、中途半端っていうのか……」

「そういえばそうですね。でも、もしそんなことされてたら、うちの娘は立ち上がれませんわ、きっと。いいえ、私たちだって……」

「そうね……そうよね……」

「ご心配頂き、有り難う御座います。でも、大丈夫ですから。そちらにはご迷惑をお掛けしませんので」

あくまで柔らかく、しかしぴしゃりと美鈴は「決めました」と宣言した。

詩菜の反対は、なかった。

正直、彼女としては、理由はどうあれ自分の息子と関係を持った女に息子の血をひく子供が生まれるというのに、自分たちはその親子を拒否し引き取ろうともせず、逆にあろうことか本来の婚約者の女性の実家がその親子を引き取るという、およそ常識では考えられないような事態に、非常に引け目を感じていたのだった。

しかし、美鈴は彼女に逃げ道を用意しておいた。

御坂さんが、強硬に引き取ると仰ったから、と。

詩菜はその逃げ道を使うことにしたらしい。

申し訳なさそうな、しかしその一方で、ホッとした安堵の色が浮かぶ詩菜に、美鈴は柔らかく微笑んでいた。

彼女は、詩菜と話をすることで自分の決断をより強固なものとし、かつ詩菜の同意も得たことで外堀は首尾良く埋まったことを確認した上で、美琴に話を切り出したのであった。



美琴の「破談」騒ぎの時、一番骨を折ったのは実に美鈴その人であった。

夫・旅掛は上条当麻が御坂妹とその後も会っていたことを知ると、不愉快さを隠さなかった。

もちろん、理由も聞いているからこそ、彼の「理性」は他に手の打ちようがないことなのだから、と理解したわけではあるが、娘を思う「父親」としての感情はそう簡単ではなかった。

本当なら「お前はわしの娘を一体なんだと思っているんだ!?」とでも怒鳴ることが出来れば、ずいぶん楽になったかもしれない。

それが出来ない旅掛の機嫌はすこぶる悪かったのである。



(あのとき、私、なんであんなに必死だったんだろう?)

麻美(御坂妹)に続き、一麻も学園都市に行ってしまい、また夫婦二人だけになった静かな家で、美鈴は思い返すことがある。

(借りを返す為、かしら?)

紛争の直前、断崖大学データセンターでの銃撃戦で、彼に命を助けてもらったから、だろうか?

(それは間違いなく、あるわよね……)

半分以上、間違いなくそうだろう。では、残りは一体何なのだろう……?

半ば無意識に、彼女は自分の引き出しをあけて、そこから薄いアルバムを取り出した。

そこには、1枚の写真だけがあった。

旅掛、美鈴夫妻が後に立っている。向かって左に旅掛、右に美鈴。

真ん中には孫娘・麻琴を抱く娘・美琴が椅子に座り、婿・当麻は彼女の向かって右隣に立ち、あの右腕を伸ばし、優しく美琴の右肩に手をかけている。

(従って、旅掛の前に当麻がいる形)

そして、美鈴の前、美琴の向かって左側に、麻美が立ち、緊張した顔の一麻を右手で押さえていた。

(そうそう、彼を真ん中にしたら?って言ったら、あの子激怒したわよねー、大人げないんだから……)

ふふ、と彼女は思い出し笑いをする。



(もう一人、出来てたらな)

男の子が欲しかったからかしらね、と遠い目で美鈴はかつての日々を想うのだった。



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