過去ログ - 新・学園都市第二世代物語
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894:LX[saga sage]
2012/10/08(月) 19:15:06.38 ID:vRcZk8Ww0

「やぁ、新年、あけましておめでとう」

「あけましておめでとう御座います、先生。今年もどうぞ宜しく御願い申し上げます」
「新年、あけましておめでとう御座います。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます」

美琴が「リアルゲコ太」と呼ぶ、カエル顔の医者。ひとは彼を冥土冥土帰し<ヘヴンキャンセラー>と呼ぶ。

今、いるのは美琴が借り出した広報委員会のリムジンの居室である。

正面玄関にクルマを着けようとしたところ、警備員に一旦止められ、美琴が名前を伝えると新たに駐車場所を伝えられ、そこで待っていると彼がやってきたのだった。

美琴は正直、麻美と一緒に彼に会うのは気が進まなかった。

精神的に参っていた状態で、彼の前で麻美との大立ち回りを演じ、その後も醜態を晒してしまったことが昨日のことのように思い出されて、非常にきまりが悪かったのである。

とりわけ、あの時の惨めな姿を見られてしまったことは、痛恨の極みであり、今の彼女にとっては無かったことにしたい最悪の記憶であった。

一方の麻美はといえば、こちらもこちらで気恥ずかしい記憶が甦っていた。

美琴との修羅場、その後の鬱状態を見られ、それを心配した彼の手配で学園都市を逃げるように出て、聖ルカ病院へ移ったことが頭の中に鮮やかに甦っていた。、

二人はそれぞれの理由で(視点が違うだけで、全く同じなのだが)、ややナーバスになっていた。

しかし、幸いなことにそれは杞憂に終わった。

「新年早々呼び出したりして済まなかったね、ああ、そう言えば、君にも名前がついたそうだね?」

何事も無かったかのように、彼は麻美に水を向けた。

さすが情報が早いわね、と美琴は改めてこの人間の情報網に舌を巻く。

「はい。お姉様<オリジナル>と、御両親には大変お世話になりました。おかげさまで、向こうで戸籍を作成して頂き、名前も『御坂麻美』という名前を頂きました」

そう言うと、チラと麻美は美琴の顔を見るが、さすがに人前では彼女も喚くことはない。一瞬視線が合ったが、直ぐに美琴は視線をそらせた。

「ほう、それは素晴らしいことだね? 学園都市で暮らす分なら、とりあえず僕が手を回しておいたあのIDカードでも不都合は殆ど無いけれど、でも正式に戸籍があるのと無いのとでは雲泥の差だからね」

「そうなのですか?」

「もちろん。きみもそうだが、生まれてくる次の時代を担う、その子もだよ? ああ、御坂くんだったね、君のお父さんには本当に感謝するよ。

学園都市の中ならば、僕も少しばかりは政治力ってものが使えるんだが、さすがに外では思うようにはいかないからね」

「あの、すみません、お話が少し見えないのですが?」

どういうことですか? という顔で美琴はカエル顔の医者を見る。

おっと、と言う顔になった彼は、

「おお、いけないいけない、まだ行き先を伝えていなかったね。すっかり忘れていたよ」

そう言うと彼は手元のスピーカーボタンを押し、指示を出した。

「すまないが、第八学区の緑が丘にある柏原病院へ急いでもらえるかな? ああ、それから入り口は緊急患者搬入口の方へ廻ってくれ。

新藤医師の担当患者だと言えばわかることになっているからね。それで、もし先に急患が入っていた場合には、もちろんそちらが優先だ。僕らは次だからね?」

彼がそう言い終わると、リムジンはすっと動きだし、病院正面ロータリーをぐるりと廻って再び大通りへと出た。

「さて、話の続きだが、御坂くんは聞いていなかったのかな、ここ学園都市にいる妹達<シスターズ>の残り3人にも日本の国籍を取る、そしてその準備は全部きみのお父さんが手を回してくれたんだが?」

美琴は驚きをあらわにし、御坂麻美(元検体番号10032号)も目を見張った。

「聞いてません、そんな話……」 

その答えを聞くと、冥土帰し<ヘヴンキャンセラー>の顔が険しくなった。

「そうなのかい? いや、それは失礼してしまったね、君にも君のお父さんにも。許してくれるかな、ちょっとおしゃべりが過ぎたようだ」

「いえ、そう言うわけでは……」

「いやいや、きっと君のお父さんは、ちゃんと機を見計らって君に話をしようとしていたはずだよ? あの人は、そう言う人だ。

お父さんの心遣いを僕がぶち壊してしまったのだからね、申し訳ないことをしてしまった。済まなかった」

そう言うと彼は薄くなった頭を下げた。



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