897:LX[saga sage]
2012/10/08(月) 19:30:21.41 ID:vRcZk8Ww0
「それって、能力者の犯罪者にも応用出来そうですね」
感心したように言う美琴。
「ああ。人権の問題は残るだろうけれど、能力を無力化することであたかもロボトミー化してしまう危険性はないから、今よりは遙かにましだろうね」
「出来そうですか?」
「それが、さすがに難しいんだね。いやはや、正直こんなに苦労するとは思っていなかったよ。でも、絶対に作り出して見せるさ」
「私、応援します」
「御坂さん、くれぐれもこの件は内緒にしておいて下さいね? 外部に漏れて悪用されたりすると大変ですから」
新藤医師が笑いながら美琴に釘を刺してきた。彼女は敏感にそれを感じ取ると、心配御無用、とばかりにニッコリと微笑んで答えた。
「もちろんです。何かお手伝い出来ることがあったら、遠慮無く仰って下さいね……って、話がAIMジャマーになっちゃいましたけれど、AIMコントローラーはどうなっているのでしょう?」
美琴は話を元に戻す。
「ははは。いやこれはすまなかったね。僕がついつい自分の話をしてしまったからいけないんだね。新藤君、説明を御願いするよ」
まいったね、と薄くなった頭をピタピタと軽く叩く冥土帰し<ヘヴンキャンセラー>。
「まぁいいんじゃないですか? 先生がどれくらい力を注いでいるかがわかりますから。
それでですね、AIMジャマーとは違った形でトライしているのがAIMコントローラーなんです。
これは能力者のAIM拡散力場に干渉するものですが、AIMジャマーと違い、妨害はしないんです。まぁ厳密に、正確に言えばある種の『妨害』とも言えますが。
AIMジャマーが真正面から拡散力場の動きを制限すべく個人の脳内の演算を妨害するのに対し、こちらは個人のAIM拡散力場の流れに干渉し、狙った方向に個人のパーソナルリアリティを誘導し能力の暴走を未然に押さえるのです」
「催眠術のようなものですか?」
「うーん……語弊はありますが、簡単に一言で言えば、そんなものでしょうね。この方式の利点は、一切副作用がないことです。
また、特定個人のAIM拡散力場に干渉することから、該当する人以外の能力者には影響がありません。一方のAIMジャマーは、出力次第でどうとでも出来てしまいます」
「欠点は?」
「装置がどうしても大がかりになることですね。それに各個人個人の拡散力場に干渉する、ということから、あらかじめ安静時の個人データを取っておく必要があります。
先ほどのAIMジャマーの裏返しで、汎用性がありません」
「一長一短なんですね」
「そうです。でも、今回のように、能力者の出産時における能力の暴走の回避、という目的においては、比較的単純です。
精神的に落ち着いている時の拡散力場の流れを基準(スタンダード)としますから、出産時においては被験者の拡散力場の流れを精査して、その平常時と同じように動くようにコントロールするわけです」
「なるほど」
「御坂さんに超電磁砲<レールガン>を撃ってもらおう、というのであれば、大揺れする拡散力場の流れを合わせるのは相当大変ですが、寝ている時のような安定した方向へ誘導するのは比較的単純ですからね」
真面目な顔のまま、目で冗談ですよ、という新藤医師に美琴も冗談で返した。
「私が出産する時には、間違っても超電磁砲<レールガン>をぶっ放すような誘導はしないで下さいね?」
彼女がそう言って笑うと、もちろん絶対しませんよ、僕も命が惜しいですからね、と新藤医師も笑いながら答えた。
「すみません、検診終わりました」
緊張した顔の麻美が帰ってきたのは、その頃だった。
「お疲れ様でした。では1時間ゆっくり休憩して、それからAIM拡散力場のデータを取りましょう。データ取りそのものは30分ほどです。
そのあと、6時に夕食を取って頂き、食後の7時、就寝前の10時にデータを取ります。
今日と同じようにですね、明日は起床時間の朝7時、食事後の8時半、昼食前の12時、昼食後の13時にデータを取り、それで終わりです。
宜しいでしょうか?」
新藤医師がスケジュールを告げると、麻美がうんざり、という顔をしたのを美琴は見逃さなかった。
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