908:LX[saga sage ]
2012/10/21(日) 22:22:42.98 ID:UzgGY96z0
そして、いつしか月日は経ち……
桜も五分咲きの4月初旬のある日。
ここは学園都市、第八学区にある柏原病院。
「あ、あの、御坂、御坂麻美(元:検体番号10032号)って女の子が今出産してるって連絡受けまして!」
受付に飛び込んできたのは上条当麻。
「そうですか、それはおめでとう御座います……IDカード御願いします……かみじょう、とうまさんですね?……みさか、あさみさんですよね?」
「そ、そうです」
「ちょっと待って下さいね……」
受付の女性が検索をかけてゆく。
「あら、おめでとう御座います。もうお生まれですよ?」
はぁーっと当麻は息を吐く。
良かった、という思いと、間に合わなかった、という自責の念からだ。
「男の子ですよ」
「そうですか! あ、有り難う御座います。で、今、その二人は? どこ行けば良いんでしょう? もう良いんですか?」
「そうですね、えっと3時間ほど前みたいですから……もう個室に戻られてますね……まだ面会可になってませんが、たぶん1時間ほどしたら大丈夫かと思いますが……」
「そうですか」
「お待ちになりますか?」
「御願いします」
「そうですよね、それではそこのロビーでお待ち下さい。OKになりましたらお呼びしますからここへ来て下さいね。おめでとうございます」
それでは、とロビーへ向かおうとした当麻を呼び止める人がいた。
「やぁ上条君、来ていたのか。まずはおめでとう、かな」
「は? ああ、先生! 有り難う御座います。あれ、どうして?」
それは、カエル顔の医者、冥土帰し<ヘヴンキャンセラー>であった。
「ははは、僕だってなんでもわかるわけじゃないよ? 産婦人科ならここの新藤君が優秀なんでね。僕は能力者の出産時における不測事態に備えるシステム構築の方なんだね」
「不測事態……とは?」
「一言で言えば、出産時における能力の暴走だね。せっかくのおめでたが悲劇になることは絶対にあってはならない。
今でこそ事故はほぼ皆無といえるレベルだけれど、つい数年前には不幸な実例がいくつかあってね……巻き込まれた人には本当に申し訳ないことをしたと思っているよ。
君の彼女の、その御坂美琴君にも実はね、モニターになってもらっていたんだよ。今、次世代のAIMコントローラーを開発中なのでね。
麻美君と言ったね、僕の元にいた彼女も、実は2回ほどここへ来てもらっていてデータの収集と臨床試験に協力してもらっていたんだよ。
おかげでエレクトロマスター系のデータはずいぶんと揃えることが出来たはずなんだね」
「そう、ですか」
当麻は、御坂家で別れたあの日以来、麻美とは全く顔を合わせていない。メールも送っていないし、送られてきてもいない。
彼女が学園都市に来ていたことも、今初めて知った。
いや、今日出産だと言うことも、美琴からのメールで知ったくらいである。
別れたんだから、そう言うことなんだよな、と当麻は思うが、ちょっと寂しいよな、とも思う。
美琴は許してはくれないけれど、あいつの、御坂妹の、御坂麻美の子供は、自分の子供でもあるのだから、と。
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