934:LX[saga sage]
2012/12/02(日) 19:30:47.66 ID:fLg29DFl0
真剣な顔の当麻は、素直に彼女の言葉に従った。
「美琴、愛してる。オレの、一番、好きな女の子」
「……もう一度。御願い」 つつつ、と涙が一筋、彼女の目元から流れ落ちて行く。
「お前が好きだ。一番好きだ。愛してる」
「名前が、抜けた……」 わずかに口をとがらせ、甘えを含んだ声で不満をいう、美琴。
「いっちばん好きな女の子! 美琴、愛してる」 これでどうだ、とばかりに当麻が叫ぶ。
「そんなおっきな声で、恥ずかしいこと、言うな、バカっ!」
そう言うと美琴は当麻の胸に顔を埋めた。
(アンタなんか、アンタなんか……馬鹿、ばかっ、バカぁ!)
美琴は顔を埋めたままモゴモゴと泣きわめき、バシンバシンと平手で当麻の肩をやたら大振りに叩く。
当麻はじっと黙ったまま、そんな彼女を左腕でしっかりと抱きとめ、右手は優しく髪を撫でていた。
ふいに、人の声が聞こえてきた。
「おいおい、天下の公道で女の子を泣かしちゃぁいけねぇなぁ、彼氏?」
「若いって、いいねぇー」
「いやー、うらやましいねぇ、全く」
涙目の美琴がバッと顔を上げ、当麻もえっと言う顔でまわりを見る。
そこは、タクシー乗り場だったのだ。数人の人と客待ちのタクシーの運転手たちが二人を見ていたのだった。
遠くで指差しながら見ているカップルもいる。
気が付けば、女子高生だろうか、キャアキャア言いながらこっちを見ているグループも2つほど。
「よう、乗るかい? どこでも良いとこまで行くけど?」
人の良さそうな運転手がニコニコしながら言う。
「し、失礼しました!」
「すみません!」
二人は脱兎の如く駆けて行く。
声を掛けた運転手は頭をかきながらクルマに戻ってくる。
「あ〜あ逃げちゃった……ははは、あの二人、これからどうなると思う?」
「うーん、恥ずかしくて何も出来ない方に賭ける」
「えー? そうかな、あれでだぞ? 行くとこまで行っちゃうだろうよ」
「つか、どっかで見たことある顔なんだよね、誰だっけな……」
その後、タクシー乗り場でひとしきり格好のネタにされた二人であった。
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