939:LX[saga sage]
2012/12/02(日) 20:02:42.12 ID:fLg29DFl0
「アンタの顔、見たくないから、このまま私の母に世話になるの、認める」
麻美に向かって、そう美琴は言い切った。
「はい。わかりました」
「美琴……」
美琴は当麻を無視して話を続ける。
「私も腹決めた。学園都市は危険すぎ。東京の人混みの中に紛れ込んでしまう方が安全よ。幸い新しく引っ越してるしね。
もちろん追跡すれば簡単に分かるでしょうけれど、私の子じゃないことももうわかったでしょうし、あんたの子をそこまでして追っかける連中はそれほどいないわよ」
「……」
麻美はしっかりと我が子を掻き抱いたまま、黙って立っている。
「あ、それからね」
美琴はちょっと意地悪い顔になった。
「ちゃんと面倒みないと、その子、母さんに取られちゃうかもしれないから、せいぜい頑張りなさいね」
顔を上げ、美琴を「え?」という顔で見つめる麻美。
「へ?」という顔の当麻。
「母さんはね、私の次にはね、男の子が欲しかったみたいだから。ボケッとしてたらいつの間にか母さんの子供になっちゃうかも」
あー、そう言えばそんなことを聞いた気もする、と当麻は思い出す。
そう言えば、抱きしめられた事も……と思った瞬間、彼は思わず反射的に右手を突き出した。
美琴が飛ばした電撃が右手でバンと打ち消される。
「アンタは余計なこと考えるんじゃないの、ニヤケ面すんな!」
「お姉様<オリジナル>……」
麻美は期待と不安がこっちゃになった何とも言えない顔で小さくつぶやいた。
「お話の途中、申し訳ないけど」
土御門元春が澄まし顔で三人の話の輪に割り込んで来た。
「また病院へUターンってとこかな、皆さん方」
薄暗い中をマーカーランプを煌々と光らせた装甲車が轟音と共に駐車場に滑り込んで来たのだった。
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(学園都市の外で育てる……そりゃあんまりだ)
良い考えが浮かばない当麻は、黙って天井を眺めるしかなかった。今日は寝付けそうもないな、と思いつつ。
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