963:LX[saga sage]
2012/12/17(月) 21:46:37.84 ID:tdje7QRJ0
「ここらでいいかな」
二人は日傘をかざしている。上空から覗かれる事を避ける為だ。
琴子(元検体番号19090号)を留守番に残して、タクシーを飛ばして美琴と美子(元検体番号10039号)は多摩川の河原へとやってきていた。
「お話をお伺いします」 やや緊張した面持ちで美子が答える。
「まず、ネットワーク切ってくれる? ちょっとね、あんたにめんどくさいことを御願いしようと思って」
「はい……接続を一時切りました。OKです。それで、どのようなことでしょうか?」
「しばらく、あんたに私の身代わりを御願いしたいの……そうね、1年……ぐらいかな。もう少し短いかも知れないけれど」
え、もしやと美子はお姉様<オリジナル>、美琴の顔を凝視する。
「もしかして、妊娠、でしょうか?」
緊張した顔のまま、彼女は一瞬だけお姉様<オリジナル>の腹に視線を走らせた。
「よくわかったわね? 顔? お腹……なわけないか」
目敏く彼女の視線を捉えた美琴は、自分のクローンである「妹達<シスターズ>」の一人、今まで影役をやらせてきた美子の顔を見る。
「少しお顔にやつれが見えますし、先ほど確認したところ身体電流のパルスが平常時と少し異なっています。
若干体温も高いようで、最初は風邪か何かかと思いましたが」
微笑んだ美子は、今度は逆に緊張した顔の美琴を優しい目で見る。
「おめでとう御座います、お姉様<オリジナル>。素晴らしいお話ではないですか、何故他のミサカたちに知らせないのでしょうか?」
「……私は、この子をここ(学園都市)では育てたくないから……よ」
美琴は彼女から視線を外し、小さい声で答えた。
「は……?」
どういう意味でしょうかと美子は一歩美琴の方へ近寄った。
「勝手だと思うけれどね……ここにいると、この子はきっと酷い目に合うはずだから」
「ひどい、目ですか……?」
「あんたなら私の今の立場、わかるわよね。学園都市のヒロインとか科学の申し子とか言われてるけど、実際のところ体の良い広告塔よ?
ま、私は覚悟してたしさ、いいんだけど。
でもね、産まれてくるこの子はどうなると思う?
私の二世だもの、蝶よ花よと持ち上げられて、何かにつけて比較され、一挙一動がみんなに注目されて。
本当にそうなるかどうか知らないけれど、そういう可能性がある、ううん、今までの事を考えると間違いなくそうなるわ。
この子はね、そこらの子供のうちの一人、で居て欲しい。ただの、普通の子供として育って欲しいの。ううん、そうあるべきなのよ。
私は、この子を自分と同じ目に会わせたくないの。自分だけでもうたくさん。私はね、この子に自分のような人生を歩ませたくないのよ。
それにね、もう一つ……もしかしたら、レベル5の子供、ということで、良からぬ考えを抱く連中だっているかもしれない」
「そんな事はありません、お姉様<オリジナル>。
お姉様<オリジナル>の人生はまだ未来があります。そんなにご自分を卑下するようなことはお止め下さい。
そして、最後の御懸念ですが、私たちがいるではありませんか?
お姉様<オリジナル>がお出かけの時は、赤ちゃんは、お子様はミサカたち、妹達<シスターズ>が守ります。
お姉様<オリジナル>のお子様は、私たち妹達<シスターズ>にとっても大事な子供なのですから」
真剣な顔で自分の想いを必死に訴える美子。
そんな彼女を見る美琴は、麻美(検体番号10032号)の子、御坂一麻(みさか かずま)のことをふと思い出す。
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