過去ログ - 新・学園都市第二世代物語
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974:LX [saga sage]
2013/01/03(木) 23:19:29.05 ID:pp/Lc+sn0


「ただいま」

重い気持ちで玄関のドアを開く美琴。

「おう、遅かったな。お疲れ」

出迎えたのはエプロン姿の当麻である。



早退した美琴であったが、そのまま家へ帰る気分にはならず、あちらこちらを当てもなく彷徨い歩き、喫茶店で時間を潰し、結局ほぼいつもの時間に家に戻った形になっていた。

「ごめんね、そんなことやらせちゃって」

「ん? いや気にすんなよ。昔からやってたしさ。お前ほど上手くならないのが問題だけどな」

「何言ってるのよ……ばか」

当麻の顔を見ると、美琴は思わずこみあげてくるものを抑えられなくなった。

長い時間を掛けて心に決めてきた事があっけなく崩れ落ち、自己嫌悪の念が膨れあがる。

私は……わたしって、なんて事を、何て嫌な女なのだろう……、と。

「ごめん」

かろうじてそう言うと、彼女は彼の脇をすり抜けるようにして洗面所へと走りこむ。

「お、おい? どうした?」

何かあったのだろうか、委員会で苛められたのだろうか、と思う当麻。

美琴には内密だが、外交委員である彼の元には各委員会における基本的なスケジュールその他が配信されてきており、それによればこの一週間は特にこれという懸案事項はなかったはずだった。

しかし、洗面所からは抑えた嗚咽の声が漏れている。愚痴やら文句やらは言うものの、滅多に泣かない妻・美琴が。



ふと、当麻は思い出す。

あのときと、同じ。

立場が逆だけれど。

当麻はいやな予感がした。



美琴はしばらくしてからダイニングルームに入ってきた。

「ごめんね。すぐ着替えてくるから。あーお腹減っちゃったなぁー」

一見明るく振舞う美琴は、そのまま自分の部屋へと向かう。

だが、その目が赤く腫れていることは隠しきれて居ない。涙声であることも。

「おぅ、ワイン飲むか?」

気づかないふりをして、わざと彼は明るい声で妻に声を掛けてみた。

返事はなかった。

(絶対に、おかしい。ただごとじゃない)

彼は調理の手を止め、エプロンを脱ぐと美琴の部屋へと向かった。



明かりをつけぬまま、暗闇の中に彼女は茫然と立ち尽くしていた。



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