975:LX [saga sage]
2013/01/03(木) 23:28:31.51 ID:pp/Lc+sn0
「苛められた、のか?」
そっと当麻が声を掛けるが返事はない。
「話してみろよ、な? こんなオレでも何か役に立つかも?って、お、おぅ!」
思わず彼はよろけた。
美琴が飛びついたからだ。
彼は黙って彼女をしっかりと抱きしめる。
美琴の身体が震えているのがわかる。
こういうときは自分は黙っているべきだ、落ち着いたら美琴は自分から話し始めるから、と彼は経験で覚えていた。
しばらくして、ようやく気分が落ち着いたのか、美琴は顔を上げずにもごもごといい始めた。
「あんた……?」
「どうした?」
「あのね」
「うむ?」
「いい話と、悪い話、どっち聞きたい?」
「両方だな。まずは悪い話を先に聞くよ」
当麻は優しく美琴を抱きしめながらささやく。
「話の順番が逆になるんだけどな」
彼女は充血して真っ赤な目を向けて見上げる。
(なんか、昔もこんなことあったな)
いつだったろうか、彼女が泣いたことがあった。その時は顔を作り直せ、と言った記憶がある。
今、同じ事を言うのは何故か気が引けた。
そんなことより、美琴が言いたがっている話の内容を彼は知りたかった。
「何だよ、それ……話の順番があるんならその通り言えよ、な?」
ぐいともう一度、美琴を強く抱き寄せる。弾力のある胸の感触が心地よい。
「ばか。苦しいでしょ? 話ずらいってば」
彼女はこういう身体を密着させる行為が好きだった。
たとえ機嫌が良くない、ぶすっと黙り込んでいるような時でも、抱き寄せられると文句を垂れながらも機嫌を直すのだった。
だが、今回はそうではなかった。彼女の声は沈んだままだった。
「いい話はね、赤ちゃん、出来た」
「……ホントか!? そうなのか? やったな、おい!!」
当麻は大声を出し、美琴から少し離れると、力の入ったガッツポーズを決めた。
「そうか、やったな!! いや、それはいい話だよ! 良かったな美琴!! そうか……美琴もママになるんだな」
あははは、と嬉しそうに笑う当麻に、美琴はわずかに苦い笑いを浮かべる。
(あんた、既に前からパパだったでしょうが、バカねぇ)
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