993:LX [saga sage]
2013/01/10(木) 22:02:14.94 ID:1IBHAIL60
社長、だと言うあの女の、見下すような一言。
「おや……? あ、そうか君が……おお、お役目ご苦労さん」
そして、私の顔を見て、なるほどね、という顔であの女は私にそっと、こう囁いたのだ。
「御坂の代わりも大変だな」
……私は驚愕した。どうして、何故、社長は、いやあの女は私が身代わりだと言うことを知っているのだろう?
あのひとは、結局その場から拉致同然に連れて行かれてしまった。
私はあの一言で呆然としてしまって、あのひとが連れて行かれるのを見ても何も出来なかった。
「ごめん、ちょっと会社寄ってくるから先に帰ってて?」
せめてもの救いは、あの人がそう言ってくれた言葉。
――― 疲れたでしょ? お仕事大変ね ―――
――― ご飯は? どこかで食べて行こうか? ―――
――― お風呂沸いてるから。えへへ、一緒に、入ろっか? ―――
あれやこれや考えてきたことが、全部妄想に終わっちゃった……。
それにしても、遅い。
もう夜、11時を廻った。
メールくらい送ってくれてもいいのにな……
― ♪ ―
あ、あのひと、帰ってきた!
私は玄関へ飛び出した。
「おっかえりー …? ええっ?」
「…つかれた… しんだ……あ、すまん、遅くなって…」
見るからに疲れ果てた、体力を消耗した、あのひとが立っていた。
「どうしたんですか、いったい何があったんですか?」
「すまんな、頼む寝かせてくれ、もうダメ……耐えられねぇ」
殆ど倒れ込むように入ってきたあのひとを、私は瞬時に抱きかかえるように支えようとした、そのとき。
― どこでお風呂に入ってきたの? ―
お湯とソープの混ざった香りを私の鼻は捉えていた。しかも、どこかで嗅いだような……
「もう駄目、死にそう……」
ふらふらのあのひとは、それでも洗面所へと歩いていった。
私はというと、どこかでかいだ記憶のある香りについて、必死で記憶を手繰らせる。
「!」
そう、あの、おんな。雲川芹亜のものだった。
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