過去ログ - 唯「あずにゃんが横浜のドラフト1位!?」憂「クライマックス!」
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126:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/26(火) 02:48:08.82 ID:3jt9zNrk0
次の日の夜。
いちごは今夜もあの公園で走っていた。

もう澪のチームはこの土地を離れている。
それなのに、今日も誰かがひょいと現れて、他愛のないおしゃべりが出来るのではないか、という甘い期待が心のどこかにある。
その心持ちを、「寂しさ」と表現するのは嫌だった。
そんなものは、自分と縁遠いものだと思っていたからだ。

シーズンが終わったとはいえ、チームの寮のすぐ近くにある、
球団が用意してくれた部屋で暮らしているいちごにとっては、その人間関係からまだ離れることはできない。
今まで、女ということもあって、周囲からは特別に見られてきたという自覚はある。

けれどあの報道がされてからは様子が違う。
今までより冷たくなった――わけではない。暖かい。みんなやさしい。
その不自然な優しさが、今の自分には非常に居心地が悪い。
なんだか自分が責められているような気さえした。

『良い子になりたいの?』

心の片隅で誰かがささやく。誰だろう?分からないけれど、きっと嫌な奴に違いない。

『みんなに好かれる良い子になれば、こんな煩わしさから解放されるのに』

その言葉はぐるぐるといちごの頭の中を駆け巡っている。もちろん今も。いや、正確にいえば走れば走るほどその声は大きくなっている。
このささやきは、まだ子供だったころに聞いたことがあった。
その時は、『別に。どうでもいいよ』の一言にふした。この言葉が、数年の時を超え、再び蘇ってくるとは思いもしなかった。

傷を負った慣れない自分にとまどいながら、いちごは走った。

ある低木のそばを走った時、木陰に隠されるように置かれた昨日のグローブが目に付いた。

明らかに昨日自分が置いた場所とは違う。

ということはこのグローブを誰かが使ったのだろうか?

明日、見にこよう――

そう思って、いちごは額を流れる汗をぬぐい、ぐい、とスピードを上げた。



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