過去ログ - 唯「あずにゃんが横浜のドラフト1位!?」憂「クライマックス!」
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133:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/27(水) 12:00:46.10 ID:B52d7inW0
冬の日。

この日は朝からどんよりと重たい雲が空を覆っていた。
風も肌を切るように冷たい。
雪になるだろうと天気予報では言っていた。

公園に行くと、いつもの場所にいつもの女の子が座っていた。
いちごはできるだけ穏やかに話しかけた。

「寒いでしょ、ここにいると」

「うん。でも…」

ここしか行く場所がないから。
女の子の言いたいことはおおよそ予想がついていた。

だから彼女はここに来るのだ。
いちごとのキャッチボールは、彼女にとって数少ない楽しみだったのだろう。
それはいちごもよく分かっていた。

「それでね、昨日のグローブなんだけど」

いちごはそう言いながら彼女の胸に抱えられた、傷の付いたグローブを見た。
直そうとしたのだろうか、テープやノリの跡が見え、傷はますます広がっているようにみえた。

「それ、まだ大きかったでしょ?だから…これ」

そう言っていちごは、包みからグローブを取りだした。
女の子の手に合う、四、五歳の子供用のものだ。
スポーツショップで買ったそれは、冬のほのかな光を浴びて、きらきらと光っていた。

「これ使ってキャッチボールしよう。それは、あなたが大きくなるまでに直して、それから使えばいい」

女の子はまばたきを忘れたように目を剥いて、差し出された新しいグローブといちごの顔を交互に見つめた。
やがて、絞り出すような声で言った。

「…ありがとうございます」

女の子はうつむいた。

「でも、いらない」

「えっ?」

「…いまのグローブがいい」

「うん。でもそれ壊れてるし。大きさもあってないし、合うようになってから…」

「これがいいの!」

女の子の声は、公園中に響かんばかりだった。
枝に残った最後の葉が、はらりと落ちた。

どうして…。
口に出してしまいそうだったが、深く探らないと自分で決めたことだ。いちごは口をつぐんだ。
けれど、女の子のほうから口を開き、ゆっくりと話しだした。


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